安倍政権時代、政敵や政権批判勢力を狙い撃ちするこうした謀略工作を内調トップとして仕切っていたのが、“官邸のアイヒマン”と称された、北村滋内閣情報官だった。
北村氏はもともと警察庁外事課長などを歴任した公安警察のエリートだが、第一次安倍政権で首相秘書官に抜擢されたのをきっかけに安倍首相と急接近。警察と官邸のパイプ役として、日本版NSC立ち上げにも深く関わり、特定秘密保護法の法案策定でも中心的役割を担った。
そして、第二次安倍政権で内調のトップに就任すると、北村氏はまるで安倍首相の私兵のような動きを見せ始める。ほぼ毎日のように安倍首相と面会し、菅義偉官房長官を飛び越えて情報を直接伝えることもしばしばだったという。しかも、内調は本来、国内外の情報を収集・分析するのが役割なのに、政権批判のカウンター情報や安倍政権の政敵のスキャンダルを流し始めたのだ。
「北村さんがトップに就任してから、内調は政権のための謀略機関的色彩がさらに濃くなってしまった。古巣の公安のネットワークを使って、野党議員や政権の告発者たちの身辺を洗わせ、その情報を自分と近い読売や産経、さらには『週刊新潮』『週刊文春』に流すというのがパターンでした」(元内調関係者)
実際、北村氏自身が官邸の意を受けてスキャンダル封じの謀略工作に関与していたという証拠も発覚している。それは、安倍首相の側近記者だった山口敬之氏による伊藤詩織氏への性加害事件をめぐるものだ
この事件では、伊藤氏に告発された山口氏が親しい安倍首相や菅官房長官に相談。官邸の圧力で捜査が潰されてしまったことを「週刊新潮」がスクープしたのだが、その「新潮」が続報で、当時、内調トップの北村氏も山口氏から直接相談を受けて、スキャンダル封じ込めに動いていたことを報じたのだ。
その証拠となったのは、山口氏が誤送信したメールだった。当時、「週刊新潮」がこの事件について山口氏に取材を申し込んだところ、山口氏が誤ってこんな文章を「週刊新潮」編集部に送信してきたのだ。
〈北村さま、週刊新潮より質問状が来ました。伊藤の件です。取り急ぎ転送します。
山口敬之〉
「週刊新潮」は周辺取材から、この山口氏が宛先にしていた「北村さま」が内調トップの北村氏であることを特定し、本人に直撃しているのだが、北村氏は「お答えすることはない」と言っただけで否定していない。
ようするに、この性加害事件では、北村氏自身が安倍首相の側近記者の相談を受け、官邸の意向を受けてもみ消しに動いていたということだろう。
実際、この事件では内調が組織ぐるみでカウンター情報を流していた形跡がある。というのも、伊藤氏が初めて山口氏による性加害告発の記者会見をおこなった直後から、ネット上では、伊藤氏について「民進党の回し者」なる風評が飛び交い、伊藤氏を「民進党関係者」だとするフェイクチャート図の画像が出回っていたのだがが、「週刊新潮」の取材によると、これらは内調が作成し、流した可能性が高いというのだ。