『報道特集」公式HPより
「日本人ファースト」を掲げ、外国人に対する差別的主張によって支持を広げている参政党だが、その問題に切り込んだ『報道特集』(TBS)がやり玉に挙げられている。
7月12日放送の『報道特集』では、今回の参院選で外国人政策が重要争点として急浮上しているなかで参政党が支持を広げている現状を取り上げ、参政党について「『外国人が優遇されている』などと訴え、犯罪や生活保護について強硬な主張を繰り返す」と紹介。一方、外国人にかんする間違った情報が拡散されていることを指摘したうえでデータを提示して誤りを正したほか、「日本人ファースト」というキャッチコピーについて、「ヘイトスピーチとは違うのか」という山本恵里伽アナウンサーの質問に対し、大阪公立大学の明戸隆浩准教授が「ヘイトスピーチで重要なのは、『差別の扇動』。差別用語を一切使わずに差別を煽るということ。『出てけ』と言ってませんよと言い訳ができてしまう。『日本人ファースト』が支持層に対して、排外主義を煽る。当然、言っている側も分かっていない訳がない」と指摘するインタビューを放送するなどした。
すると、参政党は〈選挙報道として著しく公平性・中立性を欠く内容が放送された〉〈当党の外国人政策を正確に報道せず、誤導したうえで「排外的」「差別的」と断じる論調で構成され〉たとして抗議。だが、TBS側が〈この報道には、有権者に判断材料を示すという高い公共性、公益性がある〉と回答すると、参政党はBPO放送人権委員会に申し立てをおこなうと宣言したのだ。
言っておくが、BPOの倫理検証委員会が2017年にまとめた「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」でも〈政党・政治団体や立候補者の政策については、選挙期間中であっても、その問題点を的確に指摘し国民に提示することが求められる〉と言及されており、今回の『報道特集』が放送した内容は極めて真っ当な「選挙報道」だ。むしろ、参政党がTBSに対しておこなった抗議こそ、正当な報道に対する国政政党による圧力ではないか。
しかも、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所の津田正太郎教授は「参政党からマスメディア批判の絶好の機会と捉えられ、狙い撃ちにされた面もあるのではないか」(毎日新聞7月16日付)と指摘しているが、実際にネット上では『報道特集』への攻撃のみならず、番組内で「自分の一票が、ひょっとしたら(外国籍の)身近な人たちの暮らしを脅かすものになるかもしれない。これまで以上に想像力を持って投票しなければいけないと思います」などとコメントした番組キャスター・山本恵里伽アナウンサーへの攻撃も激化する事態となっている。