では、いったい誰がA氏のプライバシーにかかわるような資料まで開示しようとしたのか。「AERA dot.」では、それが「維新の県議」であると指摘。このころ、維新の県議から「元局長をつるし上げてやる」といった発言を聞いた、という証言もあったという。
その上、7月8日に開かれた百条委の臨時理事会では、維新の県議はこのように主張したのだという。
「告発文書には、斎藤知事の自宅や好き嫌いなどの記述がある。プライベートなことを取り上げているのだから、(元局長が)自らの調査結果はプライベートな問題だから公開しないでとは、あまりに都合のいい身勝手な論理ではないか」
結果として、この日の臨時理事会ではA氏の申し入れが認められ、告発文書とは関係のない資料については開示しないことが決定したというが、すでにこのときA氏は亡くなっていた。
本来、公益通報者であるA氏は保護されるべき対象だ。何度もA氏を取材してきたというジャーナリストの今西憲之氏は「AERA dot.」の記事のなかで、6月末にA氏を直接取材した際、「百条委員会で語ることが兵庫県の未来のためになると信じている」と前向きに語っていた、と記している。維新の県議が、プライバシーを含むすべての情報の開示を求めるという脅しのような暴挙に出ていなければ、A 氏は自死に追い込まれていなかったのではないか。
そもそも、県議会で百条委の設置を求める動議が提出されたときも、維新の県議は揃って反対に回った。少なくとも、斎藤知事と維新の県議が真実の追及に後ろ向きな言動をとってきたことは、たしかな事実だ。
斎藤知事だけでなく維新の県議までがなぜ、ここまでして真相を明らかにするのを妨害しようとしたのか。それは、A氏が斎藤知事と維新にとって暴かれたくない、もっと大きな問題を告発しようとしていたからではないのか。