いま、SNS上では、万博会場の下水処理能力が疑問視され、馬場代表が「汲み取りのトイレが衛生上問題だとは思わない」と言い出したり、吉村知事が「汲み取りはデマ。汲み取りではなく、全て水洗だ」などと火消しに走るなどの騒ぎとなっている。だが、そもそも汲み取り云々の話以前に、万博という期間限定イベントのために下水道をわざわざ整備しなければならないことが問題なのだ。実際、昨年3月8日の大阪市議会での説明によると、下水道整備にかかる総事業費は115億円にものぼるという。
無論、問題は下水道だけではない。地盤改良に盛り土作業、上水道、電気、道路の整備、地下鉄延伸……。当初、万博会場の候補地として挙がっていた前回の大阪万博跡地である万博記念公園や服部緑地、鶴見緑地などで実施すれば、こうしたインフラ整備にここまでの巨額を投じる必要はなかった。つまり、カジノ誘致ありきで万博会場を決めたばかりに無駄遣いがまかり通り、「トイレは汲み取りになるのか」などの疑念を膨らませることにつながっているのだ。
今回、「カジノは日常生活を阻害する施設」「大阪万博はカジノのための万博」と批判をおこなった建築家の山本理顕氏は以前、横浜市が誘致を進めていたカジノ計画に対しても「市民を置き去りにしている」「カジノで集客する考えは20世紀で破綻した」とし反対の立場を取り、横浜市が実施したコンセプト提案にもIR事業者に混ざって参加。カジノありきではない〈住む人の生活そのものが観光資源となる場所をイメージ〉した提案をおこなった(毎日新聞2020年10月29日付)。
一方、大阪カジノは、市民を置き去りにするばかりか、示された民意さえ蔑ろにした。2022年には大阪カジノ誘致の賛否を問う住民投票の実施を求める署名運動がおこなわれ、住民投票実施の条例案を吉村知事に直接請求するために必要な法定数を超えたというのに、維新独裁体制の大阪府議会はこれを否決。松井・吉村両氏は府民の民意を切り捨てた。
そればかりか、2016年に松井知事は「IR、カジノに税金は一切使いません」と明言していたにもかかわらず、カジノ用地の汚染土壌対策として788億円を上限に大阪市が負担することを決定。IR開業後に施設拡張がおこなわれる場合は追加で約257億円の公費負担が必要だと市が試算しているほか、万博跡地の一部を「国際観光拠点」とするべくIR予定地と同様の対策をした場合はさらに約766億円が必要だと見られている。つまり、夢洲の土壌対策には今後、合わせて1000億円が必要になる可能性があるのだ。
山本氏による「大阪万博はカジノのための万博」という批判は当然の意見であり、公然の事実だ。しかし、それさえも事実を捻じ曲げた反論にもなっていない反論で浅ましい態度をとる維新。このような連中に、いったい何を任せられるというのか。大阪万博とカジノは、中止一択しかないだろう。
(編集部)
最終更新:2024.03.09 12:49