たとえば、2000年8月には、イソジンのうがい薬などをテーブルに並べて「ウソのような本当の話」「コロナに効く」などと喧伝する記者会見を、テレビで生放送される時間帯を狙って開催。情報公開請求によって公開された当時の内部文書を読むと、このときの会見も、当初は松山晃文・大阪はびきの医療センター次世代創薬創生センター長が研究成果を発表する予定になっていたのを、前夜になって吉村知事が説明することに変更。大阪府の藤井睦子・健康医療部部長が松山センター長に送信したメールには、〈知事自身がフリップを使って(中略)研究の成果をお話しになりたいということです〉〈知事が明日の会見で、ポビドンヨードの現物を展示しておきたい、とおっしゃっており〉と書かれていた。つまり、あの会見は、吉村知事が先走って手柄を横取りし、自身のパフォーマンスに利用したものにすぎなかったのだ。
例の「大阪産ワクチン」も同じだ。2020年4月、吉村知事と当時の松井一郎・大阪市長は、「オール大阪でワクチン開発を進める」と宣言。これは大阪大学の森下竜一・寄附講座教授と、森下教授が創業したバイオベンチャーのアンジェスが共同でDNAワクチンを開発するというもので、吉村知事は「9月から実用化に向かう」「実用化されれば10万~20万人単位で接種が可能で、コロナウイルスと戦う武器になる」と豪語し、同年6月には「今年中には10万から20万の単位での製造というのが可能になる」「2021年春から秋に実用化を目指したい」とまで発言。この間、開発会社のアンジェスの株価は、それ以前の600〜700円台前後から2000円以上に爆上がりした。
ところが、アンジェスは2021年11月に「(治験で)想定していた効果が得られなかった」と公表し、2022年9月にはDNAワクチンの開発を中止すると発表。さんざん大言壮語を繰り返しながら大失敗に終わったのだ(ちなみに、森下氏は大阪万博にも食い込んでおり、「大阪パビリオン推進委員会」の総合プロデューサーに就任。さらに、万博スポンサー最上位の協賛企業に位置づけられる「スーパープレミアムパートナー」には森下氏が顧問を務める浄水器販売会社「株式会社サイエンス」が入っていることなどから、森下氏に万博を任せようとする吉村知事・松井市長の責任を問う動きが起こっている【詳しくは既報参照→https://lite-ra.com/2022/10/post-6236.html)。
コロナの不安につけ込むように、検証もおこなわれていない、目処も立っていない研究を持ち出しては、自分の手柄として喧伝し、利用するだけ利用する。しかも、それらが何の成果も得られないまま終わっても、なかったことのように知らんぷりする。そして今度は、一向に準備が進まない、機運も高まらない大阪万博の起爆剤として阪神タイガースの優勝を利用。お得意の記者会見を大々的に開いて、パレード開催をぶち上げたというわけだ。
吉村知事のパフォーマンスに、一体いつまで踊らされなければならないのか。とくに阪神ファンは、あまりに露骨すぎる「タイガースの政治利用」に、もっと怒るべきではないだろうか。
(編集部)
最終更新:2023.09.23 09:16