これは里見会長の“ホラ話”ではない。というのも、セガサミー広報部は嘉納治五郎財団への寄付の事実を認めており、「週刊新潮」が独自入手した嘉納治五郎財団の決算報告書でも、2012年から13年にかけて2億円も寄付金収入が増えていることを確認。関係者は「その2億円は里見会長が寄付したものでしょう」と語っているのだ。
ようするに、東京五輪招致の買収疑惑をめぐっては、森前会長が代表理事・会長を務める嘉納治五郎財団の関与が毎度といっていいほど取り沙汰されてきたのである。
この問題については、2020年11月にIOCのトーマス・バッハ会長の来日時におこなわれた記者会見で、ロイターの記者が直接、組織委会長として同席していた森氏に「(招致委から支払われた約1億4500万円は)何のために使ったのか」とぶつけたのだが、「私は実際の経理や金の出し入れというのは直接担当しておらず、おっしゃったようなことがどこまでが正しいのか承知していない」などと返答。そして、この会見の直後である2020年12月末になって嘉納治五郎財団は密かに活動を終了させたのだ。
しかも、森前会長の疑惑はこれだけでは終わらない。それは、東京五輪招致、新国立競技場建設にともなう「神宮外苑地区の再開発」への暗躍だ。
詳しくは既報を読んでいただきたいが(https://lite-ra.com/2016/10/post-2601.html)、五輪招致の背後では、神宮外苑地区の再開発をめぐって、森前会長の親友とされ明治神宮と太いパイプを持つとされていた人物の関与が囁かれるなど、森前会長が東京五輪開催による再開発に絡んだ建設利権を狙っているのではないかといわれてきた。
前会長は2016年五輪招致の際から「国立競技場や岸記念体育館の建て替えが、政治家の私が(日本体育協会の)会長になった意味。東京に五輪が来れば、全部できる」と当時の石原慎太郎都知事に話して東京への五輪招致を焚きつけたと報じられているが、実際に森氏が神宮外苑再開発に関与していたことを示す文書も明るみに出ている。
東京都の開示資料によると、2012年2月28日に森氏が強い影響力を持っている清和会所属で当時落選中だった萩生田光一氏が東京都の安井順一技監(当時)と面談。そこで萩生田氏は「森元首相から『競技場施設そのものは国。しかし都が一生懸命汗をかいてくれないと困る。君が、文科省、NAASH(編集部注:日本スポーツ振興センター、現JSC)、都を横断的に調整してくれ』と言われている」と告げると、日建設計が作成した整備案を広げて見せ、このように迫っている。
「国が踏み出すことを都が待っていては遅い」
「実現する時は自民党政権に戻っている。今の機会しかここの整備は出来ない」
さらに萩生田氏は岸記念体育会館の移転建て替えについても、「(移転を)日体協が望んでいるようだ」と発言。つまり、森氏は萩生田氏を使って神宮外苑のスポーツ施設にかんする再整備を都に働きかけていたというわけだ。