しかも、この吉村知事の詭弁に対し、毎日新聞の記者は粘り強く質問を繰り返したのだが、それでも「僕自身の考えだ」と主張しつづけた。
毎日記者「(確実なものではないと伝えていることは)そこは承知しています。いま確認したいのは……」
吉村知事「(質問を遮り)単独の考えという意味ではなくて、さまざまな声が上がってくるなかで僕自身はそういう可能性があるんではないかということをお伝えしているだけで、それが確証あるもんではないというのは何度も伝えているとおりです」
毎日記者「基本的には知事のお考えということを、たとえばテレビ番組やこういう公的な場で、専門家に聞いたかどうかわからないけれども『高齢者と若者の距離が大阪は近いんじゃないかという見方もある』というふうに、ご自身の意見としてではなく、何か別の方の第三者の指摘として紹介されるというのは情報発信の仕方として正しいんでしょうか?」
吉村知事「いえ、僕自身の意見として伝えています」
毎日新聞記者「いえ、そういうふうにおっしゃってないじゃないですか」
吉村知事「いや、僕自身の意見として伝えています」
言っておくが、既報でも書いたように、番組内で吉村知事が「高齢者と若い世代の生活圏が非常に近いんじゃないかとおっしゃる方もいらっしゃいます」と発言したことを受けて、番組MCのハイヒール・リンゴは「結構、大阪市内でも(高齢者施設が)ありますもんね」「おじいちゃん、おばあちゃんが近くに住んでるっていう人も多いし、まあ東京の場合はちょっと働きに出てって、田舎があってという方が多いかもしれないので、この辺の違いが出てきてるんじゃないかということですよね」などと言い出し、大阪の死亡者が多い理由は「高齢者と若い世代の生活圏が非常に近い」からだという空気がすっかりできあがったのだ。にもかかわらず、吉村知事はその発言の根拠を問われても答えられず、挙げ句、「僕自身の意見だ」と言ってごまかそうとするとは……。これでは、「僕自身の意見」として何でもでっち上げられるようになってしまうではないか。
だが、吉村知事のごまかしはこれだけでは終わらなかった。
というのも、毎日新聞の記者はさらに食い下がり、「誤解を招く発言だったし、知事ご自身の意見としては語られていなかった」と指摘。こうつづけた。
「(吉村知事が)そういった発言をされるので、(記者は)部局も含めて問い合わせはするんですけれども、担当部局も知事がおっしゃっている指摘・考え方というのは、どういったことを根拠にされているのかというのは『わからない』という回答をされています」
「われわれ府庁にいる記者からするとですね、担当部局に質問をして、知事の考え方・発言というのが『何を念頭に置いているのかわからない』という返答が返ってくるとか、『公式見解ではない』という回答がくるっていうのは“あるある”の光景ではあるんですけれども、やはり組織のトップとして発言されているので、そこは通常は組織の考え方、知事の考え方っていうのは府の考え方だというふうに認識されるものだと思うんですけど、そういう府庁内のコミュニケーションをもう少し丁寧にされるべきじゃないでしょうか」
つまり、吉村知事の発言は担当部局ともまったくコンセンサスがとれておらず、裏付けを取ろうとしても、府庁の職員が「何を念頭に置いているのかわからない」「公式見解ではない」と返答するのが「あるある」だと毎日新聞の記者は指摘したのだ。