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NHKで河瀬直美監督「五輪を招致し喜んだのは私たち」発言に批判殺到! 番組は「五輪反対デモは金で動員」と印象操作


 
 ようするに、テロップでは「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」と打ち出しながら、問題の男性が肝心の動員された事実を語る映像は一切出てこなかったのである。

「お金をもらって動員〜」というテロップが出ている場面では、男性が「光熱代から全部一緒で」と話しているのがかすかに聞き取れ、これが唯一金銭にかんすると思しき発言だ。だが、この発言の前後は放送されておらず、これがデモ参加の報酬について話しているのか、たんなる男性の金銭事情の話なのか、あるいは男性が「光熱代」をもらった話なのか払う話なのか、この場面だけでは判別できない。いや、それ以前に、この男性がいつどのデモに参加したかすら示されていない。

 本来、「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」とテロップを出すのであれば、それを裏付ける証言や何らかの証拠を提示するのは当然のことだ。にもかかわらず、証言も証拠も出さずにこのような放送をおこなったのだ。疑義の声があがるのは当たり前だろう。

 しかも、前述したように、本サイトでも「金で動員がかけられていた」というような話は一切耳にしたことはない。実際、この番組が再放送されたあと、このシーンの動画がTwitter上で拡散されると、反対デモを主催した団体や関係者らが一斉に反論。

 たとえば、2013年から反対運動をおこなってきた東京の市民グループである「反五輪の会」は、〈反五輪デモでお金は貰えません。当会主催のデモはもちろん、他でも聞いたことありません〉〈デモの報酬としてお金をもらったことも払ったこともありません〉とツイート。同じく東京で活動してきた市民団体「オリンピック災害おことわり連絡会」も〈デモの呼びかけ団体として「参加者を動員するためにお金を配る」といったことは一切行ってきておりません〉と反論をおこなった。

 また、東京五輪の開会式当日に中止を求めるデモには中核派の活動家も参加し、警察官の手首をつかんだとする公務執行妨害の疑いで逮捕されているが、〈五輪開会式当日、現場でフィールドワークした研究者〉という五野井郁夫・高千穂大学教授は〈わたしが中核派の担当弁護士に確認したところ「日当」での動員はないとのこと〉〈そうした動員手法は「ない」と全面否定でした〉とツイートしている。

 さらに、反対デモに参加したことのあるという人たちからも、〈反五輪の会の主催や賛同の抗議行動にわたしは参加してましたが、マジでお金なんてもらったことない〉〈私もいくつかの五輪反対デモに参加したが、金なんかもらったこともなければ、そんな話を聞いたこともない〉〈私は自分でSNSで情報見て何度も参加し、お金などもらっていませんが、どこでもらえますか?あの人だけが特別ですか?それならなぜそんな特殊な出来事を、説明もなく映像にねじ込んだのですか?〉という声があがったのだ。

 しかも重要なのは、このシーンは島田監督が公式記録映画用に取材・撮影している現場を、NHKが密着取材し撮影したものであるということ。つまり、NHKの番組制作側がこの場面を使うことを決定し、編集・放送したという事実だ。

 実際、島田監督に対してあるTwitterユーザーが“取材相手が言っていないことがテロップに入っている。島田さまのご意図でこうなったのか、知らないうちにこうなったのか”と尋ねると、島田監督は〈編集はNHKに任せております。NHKにご連絡頂けると助かります〉と返答している。

 繰り返すが、金による動員を語る者がいるのならば、最低限、その証言の該当部分を放送するのは当たり前の話。それすらもなく「お金をもらって動員されている」とテロップを出して放送することは、証拠なき印象操作だ。さらに、この番組内で「反対デモに参加した」という人はこの男性しか登場しない。そのため、あたかも反対デモでは日当が支払われるのが普通のことであるかのように視聴者が受け取ってしまう危険もあるかたちになっているのだ。

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