そのことを報じたのは、18日に「NEWSポストセブン」で配信された元NHK記者であるジャーナリスト・相澤冬樹氏によるレポート。相澤氏は、岸防衛相が自民党山口県連会長として遠藤選対委員長に宛てた「第49回衆議院議員総選挙に係る比例代表第二次公認候補者について」という文書を入手。山口県といえば、林芳正・元文科相が参議院から鞍替えして山口3区からの立候補を決め、同区の現職である河村建夫・元官房長官との対立が起こっていたが、長男・健一氏の比例区からの出馬を引き換え条件にして河村元官房長官は出馬を断念。自民党本部は健一氏を比例代表中国ブロックで追加公認していたのだが、この文書で岸防衛相は健一氏の同ブロックでの公認に抗議。その上で、このような要求をおこなっていた。
〈当県連といたしましては、比例代表中国ブロックでは、既に、現職の杉田水脈氏を第一次公認候補としてご決定いただいており、本候補の名簿上位掲載にご配慮をいただきますよう、強くお願い申し上げます。〉
差別を助長する発言を連発してきた杉田氏がこれまで何ら処分も受けずに国会議員をつづけてきたこと自体が異常事態だというのに、その上、「比例名簿の順位を上位に上げろ」と要求するとは……。絶句するほかないだろう。
無論、岸防衛相が「杉田氏の名簿順位を上げろ」と要求したのは、実兄である安倍元首相の意向であることは疑いようもない。
そもそも、杉田氏は極右政党・次世代の党の所属議員だった2014年10月に国会で「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想です」と暴言を吐き、「週刊プレイボーイ」(集英社)でのインタビューでは、日本に男女差別は「ない」と断言。「あるとすれば、それは日本の伝統のなかで培われた男性としての役割、女性としての役割の違いでしょう」「(基本的人権が守られている上に)そこにさらに女性の権利、子供の権利を言い募ると、それは特権と化してしまう」との驚くべき前近代的主張を展開したことで大きな非難を浴びたことがある。
だが、こうした杉田氏のアジテーションに注目したのが、安倍元首相だった。前述したように、杉田氏は前回2017年の衆院選で自民党から出馬し比例で当選を果たしたが、その舞台裏について、櫻井よしこがネット番組『言論テレビ』のなかでこう語っていた。
「安倍さんがやっぱりね、『杉田さんは素晴らしい!』って言うので、萩生田(光一・自民党幹事長代行)さんが一生懸命になってお誘いして、もうちゃんと話をして、(杉田氏は)『自民党、このしっかりした政党から出たい』と」