もっとも、ネトウヨは「高市早苗さんを総理大臣に!」というエコーチェンバーの祭りによって高市総理の誕生を信じてやまない様子だが、永田町を知る政治評論家たちの見解は冷ややかだ。
たとえば、安倍前首相をはじめとして政権幹部や有力政治家に近いためにこの手の政局の話題では外さないと定評のある田崎史郎氏も、キングメーカーである安倍前首相が高市支持に回った理由について「硬い保守層が政権から離れていっているという見方がある」とした上で「保守層に弾を撃ち込んで活性化させて総裁選を通じて衆院選までやっていただこうという気持ちが、高市さんの擁立に作用している」と解説(8日放送TBS『ひるおび!』)。
また、6日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)では、田崎氏は前述の共同通信社の世論調査においてもっと大事なのは「自民党支持層の支持率」であるとし、そこでも河野氏が37.1%であるのに対して高市氏が5.3%にとどまっていることを指摘。このように解説していた。
「保守派の代表として高市さんは立っている。安倍さんもそれに乗ってるんですけども、これ、意外と、非常に強硬な保守派の人たちの数が見えちゃうんじゃないか」
つまり、強硬な保守派=極右の支持者へのアピールとして安倍前首相は高市氏の支持に回ったものの、その数字は全体からすればわずかにすぎないのではないか、と暗に指摘したのである。
だが、一方でこのネトウヨ総結集の祭りは「ネット上の空騒ぎ」で終わるとはかぎらない。事実、高市氏は安倍前首相の支持だけではなく、すでに日本会議の全面支持も得ているという情報もあるし、細田派の若手・中堅にも高市支持が広がっているという情報もある。状況によっては、現段階では河野潰しのために岸田氏を推すと見られている麻生太郎氏が高市支持に回る可能性も考えられる。
さらに、本日の高市氏の出馬表明会見では、その極右ぶりを隠そうともしない主張の危険さに溢れていたが、同時にカンペに目を落とすこともなく淀みなく喋りつづける弁舌の達者ぶりも際立っていた。「女性初の総理候補」という看板も手伝って、総裁選告示後におこなわれる候補者討論会などでは存在感が増してくるかもしれない。
高市氏がもし総裁に選ばれるようなことが起これば、それは安倍政権以上にグロテスクな歴史修正、弱者切り捨てと差別・排外思想の蔓延、そしてナショナリズムの煽動がおこなわれることは必至だ。ネトウヨのネット運動を笑うだけではなく、十分に警戒しなければならないだろう。
(編集部)
最終更新:2021.09.08 11:56