メディアにいちゃもんをつけ、医療崩壊待ったなしの状況であることを認めようとせず、そればかりか都合の悪い数字が発表される前にトンズラする──。あまりにも無責任かつ下劣としか言いようがないが、一方でいま東京が最大の危機を迎えていることをしっかり認識している都庁幹部もいる。実際、27日放送の『news23』(TBS)では、都庁幹部による「緊急事態宣言の効果がなくなったと言っても過言ではない状況が生まれている。万策は尽きた」というコメントを紹介。同日放送の『報道1930』(BS-TBS)でも、同じ都庁幹部の「万策は尽きた」というコメントが取り上げられ、さらにこの都庁幹部は「五輪との因果関係はあると思う」ともコメントしたと伝えられた。
しかし、この「万策尽きた」という都庁幹部のコメントが象徴しているのは、小池都知事の姿勢だ。方策がないどころか、十分な補償とセットにした協力要請はもちろん、東京には「五輪の中止」というカードもある。いま五輪を中止すれば、そこに割かれている療養用ホテルや病床、医療従事者のリソースを戻せる上、現在が危機的状況であることを周知する強いメッセージになる。だが、それでも「万策尽きた」と言うのは、それを小池都知事が決断する気がない、ということだ。
そして、今回の「一人暮らしの人は自宅を病床に」発言……。東京五輪という感染拡大の要因にくわえ、平然と都民を見殺しにすることを口にする小池氏を首長に据えている事実の深刻さを、都民はどれだけ認識できているのだろうか。
(水井多賀子)
最終更新:2021.07.29 10:01