このように、現状のワクチンをめぐる混乱の元凶は、自治体にすべての責任を押し付けるだけで、都合の悪い事実は国民に伏せ、ワクチンを政治利用してきた菅首相と河野大臣にあることは疑いようもない。にもかかわらず、責任者である河野大臣は謝罪を口にしながらも、実態は居直っているだけなのである。
そして、いま問題にすべきは、この河野大臣の態度だ。安倍晋三・前首相にしろ菅首相にしろ「『謝ったら死ぬ病』なのか」と言われるほど自身の非を認めようとしてこなかったが、それはこの期に及んでも自己正当化した頭にない河野大臣も同じだ。
しかも、モデルナ製ワクチン隠蔽問題について“政府に対する国民の信頼が棄損されている”と言及し、〈この一連の政治過程は、河野太郎という政治家のネオリベ的特質が出たとみるべきだろう〉というじつに的を射た指摘をTwitter上でおこなった政治学者の中島岳志氏に対し、河野大臣は自身のブログで「知の崩壊?」と題して反論。前述した“ファイザー製を確実に輸入するためにモデルナ製の供給先送りを承諾した”というたんなる交渉失敗話を長々と書いているだけで何の反論にもなっていないのだが、そのなかで河野大臣は中島氏に〈お酒の量を減らすことをおすすめします〉と書き綴っている。
それでなくても一国の大臣が国策について自身のブログで明かすこと自体が異常なのだが、挙げ句 “酔っぱらいの戯言”などという罵詈雑言まで投げつける──。「知の崩壊」を起こしているのは、あきらかに河野大臣のほうなのだ。
国民の命と安全にかかわる重大事であるにもかかわらず、口先だけの謝罪でお茶を濁し、反省がまるでないまま自己正当化に走り、けっして事実の隠蔽を認めようとしない。この「自分は絶対に間違えない」という無謬性こそが独裁を生むわけだが、この大臣はその素質を十分に兼ね備えていることが、今回、あらためてはっきりした。そしていま、重く受け止めるべきは、これだけの大失態を重ねながらもいまだにこの居丈高な無能大臣が「ポスト菅」「次の総理」に挙げられているという事実の深刻さなのだ。
(編集部)
最終更新:2021.07.16 10:56