ようするに、入管は仮放免すべきだったウィシュマさんを収容しつづけ、必要な医療を受けさせることもせず、死に至る直前まで放置しつづけるという事実上の「見殺し」をおこない、挙げ句、医師から仮釈放の必要性があると伝えられていたことを隠蔽までしていたのだ。
これまでも入管では収容した外国人に対して必要な医療を受けさせず、「見殺し」を繰り返してきた。いま必要なのは、入管のこうした体質を抜本的に見直し、収容者への対応を改善することにほかならない。だが、今回の改正案では入管の権限がより強くなるだけで、法務省にも入管庁にも改善をおこなう気は欠片もないのだ。
このような「反人権」の入管行政を強化するだけの法改正は絶対に許されるものではなく、即刻廃案にすべきだ。しかし、これだけ国内外から批判を浴び、さらにはウィシュマさんを死にいたらしめた経緯や責任を明らかにしないなかで、与党は強行採決しようとしているのである。
この問題は「外国人の話」ではなく、この国の人権意識が問われるものであり、法の「改悪」を見過ごすことは人権を蔑ろにする政府を黙認することになる。昨年、Twitterデモの高まりによって検察庁法改正案を見送らせたように、この入管法改正案も廃案に追い込まなくてはならない。
(水井多賀子)
最終更新:2021.05.11 05:21