積極的に動かなかっただけではない。菅官邸は前述した特殊な注射器をめぐって、ファイザーやEUを敵に回すような事態まで起こしている。
ファイザーのワクチンは1瓶に6回分が入っているが、通常の注射器では5回分のワクチンしか採取できないため、6回分を採取するには特殊な注射器が必要になる。ところが、日本政府はそのことを知らされていたにもかかわらず、何の対策も打たなかった。
そして、特殊な注射器の確保のめどがまったく立っていなかった2月、加藤勝信官房長官が記者会見で、接種しきれない1回分のワクチンはどうなるのかと質問を受け、「基本的には廃棄されると承知している」と発言してしまったのである。
この発言に、EU諸国が「ワクチンが世界中で足りないのに、日本では捨てるのか。それなら輸出する必要はない!」と反発(前出「週刊文春」より)。一時は、ファイザーのワクチンの日本向け輸出をEUが承認しないのではないかという危惧の声もあがるほどだった。
ようするに、こうした安倍政権、菅政権の怠慢と失態が、現在の状況を生んでいるのだ。そのことは、イスラエルのネタニヤフ首相と比べればあきらかだ。ネタニヤフ首相とエデルスタイン保健相はブーラCEOに17回も直談判し、独自契約に漕ぎ着けた。その結果、イスラエルは16歳以上の対象者の80%以上が2回接種を終え、感染者数や入院社数が激減。屋外でのマスク着用義務も解除された。
かたや、この国のワクチン接種率はG7でダントツ最下位の0.87%(4月10日時点)。感染が爆発状態に陥っているなか、重症患者を受け入れている病院で1回目の接種も済んでいない医療従事者が丸腰で診療にあたっている。
にもかかわらず、「9月までに供給されるめどが立った」などとうそぶき、あたかも成果をあげたかのような顔をする総理大臣──。なぜ、この国の国民はこんな政権を許しているのか、ほんとうに不思議でしようがない。
(編集部)
最終更新:2021.04.19 09:46