実際、組織委と電通をめぐっては、開閉会式の主導権争いのレベルではなく、さらに大きな利権の問題が取り沙汰されている。それは、大会運営の委託費問題だ。
というのも、東京五輪の会場運営を担う企業への委託費の見積額を記した組織委作成の内部資料を、毎日新聞が独自入手。それによると、委託費は計約163億9000万円にものぼり、人件費単価はなんと1日当たり最高30万円であるとスクープしたのだ。
記事によると、たとえば東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで実施される競技運営の場合、〈企業への委託費は約5億3000万円で、人件費単価は「運営統括」で日額30万円、「チーフ」で同20万円、「ディレクター」で同20万円〉となっているという。
そして、この委託先企業のひとつが、電通だ。委託先企業は計9社あり、その中心となっているのが電通や博報堂、ADK、東急エージェンシーといった大手広告代理店なのである。
炎天下のなか約8万人のボランティアを無償で働かせ、一時は選手村や競技会場で活動する医師や看護師にも無償で協力させようとさえしていたのに、一方で電通をはじめとする委託先企業には日額30万円が支払われる──。「世界一カネのかからない五輪」という触れ込みだったのに、当初の約7300億円という大会予算がいまでは1兆6440億円に膨れ上がっているが、その裏では組織委と電通の「癒着」によって金が流れていくという構造が出来上がっているのである。
そもそも電通は、五輪の東京招致に絡んだ買収問題でも関与が取り沙汰されてきたが、組織委と電通のズブズブの関係はそうした根本の問題が追及されずに放置されてきた結果、増長してきたと言っていい。そんななかで起こったのがMIKIKO氏排除の問題であるわけだが、委託費問題を見ればわかるように、これは組織委と電通の癒着問題の氷山の一角でしかない。