しかも、会見では逆に運動事務局のずさんな実態が露わになる一幕もあった。
署名集めを担う「受任者」は自治体の選挙人名簿に登録されている必要があるが、無効票の約4分の1は名簿に登録のない受任者が集めた署名だった。同席した田中孝博事務局長によると、受任者はインターネットやはがきを通じて募集し資格の確認はしていなかったと明かしたのだ。これについても、高須院長は「リコールを成功させようと応募した人は、お互いを信じ合おうとの考えだった」と精神論でごまかすことしかできなかった。
しかも、会見の最後には、高須院長が病気を理由に撤退を宣言した後も率先して署名集めを続けていたという事務局関係者の実名をあげ、「大村知事から金をもらってる」「明確に敵」などと一方的に糾弾したのだ。
どうみても、説明責任を果たしているとはいいがたいが、しかし、今回のリコール不正をめぐっては、高須院長らの無責任な姿勢以外に問題はもうひとつある。
それは、こうしたリコール不正問題や高須院長の言動をメディアがまったく批判しないことだ。
地方都市のことだからと言い訳するかもしれないが、もっと小さい市町村の議員の細かい不祥事でもワイドショーはよく取り上げているし、それこそ高須院長の話題は「高須院長が全身がん告白」「高須院長がツイッターで○○にコメント」「高須院長が××を太っ腹支援」「高須院長が野党議員に抗議」などとしょっちゅう取り上げている。『バイキングMORE』(フジテレビ)や『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)などは単なる近況報告のような特集をやることだってある。
しかし、この問題についてはほとんどのワイドショーやニュース番組がまったくと言っていいほど取り上げていない。そして、取り上げた数少ない報道も明らかに及び腰なのだ。
一体なぜか。ひとつはこのリコールが「あいちトリエンナーレ」の展示をめぐる歴史修正主義の動きと連動したものであることだろう。高須院長らを批判してネトウヨの攻撃を受けることを恐れている可能性もある。そして、もうひとつはやはり高須クリニックがテレビ局にとって大スポンサーだからだろう。