「久兵衛の話もそうですけどね、決めつけをしたら、それ真っ赤な嘘だったじゃないですか。真っ赤な嘘だったですよね? それはやはり自分は嘘をついてしまったということを認められたほうがいいと思いますよ?」
2月3日 衆院予算委員会
このように、鬼の首をとったように立憲民主党・黒岩宇洋衆院議員に対して「嘘つき」呼ばわりしていた安倍前首相。しかし実際には、衆院調査局が認定しただけでも118回も嘘の答弁をおこなっていたのは安倍前首相のほうだった。呆れるほかないだろう。
しかも、今年12月25日におこなわれた議院運営委員会でも、黒岩議員が「嘘をついたと認めろ」と迫った安倍前首相こそ嘘をついていたと指摘すると、安倍前首相はいまだに「久兵衛は前夜の会合にすしを提供していないと明確にしている」などと反論したのである。118回も嘘をついた人間がまだ言うか……という話だろう。
重要なことなので指摘しておくと、黒岩議員も反論していたように「すしを提供していない」と証言したのは銀座本店の主人であり、ニューオータニの支店ではない。さらに、2019年11月24日放送の『サンデーステーション』(テレビ朝日)では、ニューオータニの関係者が「一般論として宴会でニューオータニ内の久兵衛以外のすしを提供することは基本的に認めていない」と証言している。
だいたい、ここまで「久兵衛のすし」問題にこだわるならば、決着をつけるためにもニューオータニに明細書の再発行を依頼し、国会へ速やかに提出するべきだ。しかし、なぜか安倍前首相はそれを拒絶している。これでは、明細書が公になることで自分がついた「真っ赤な嘘」が新たに発覚するのを隠蔽しようとしているとしか考えられないだろう。
「意味のない質問だよ」
2月12日 衆院予算委員会
天敵である立憲・辻元清美衆院議員が、「桜を見る会」や森友・加計学園問題を総括して「タイは頭から腐る」と指摘した質疑が終わった直後に、安倍前首相が言い放った“ヤジ”がコレ。
総理大臣がヤジを飛ばすこと自体、品性を疑わざるを得ないが、安倍前首相といえば事あるごとに「ヤジるな」と野党に繰り返してきた張本人。しかも2015年に同じ辻元議員に「早く質問しろよ」とヤジを飛ばし、その後、陳謝もしていた。ようするに、一度も反省などしてこなかったのだ。
だが、痛快だったのはこのあと。安倍前首相からヤジを浴びせられた辻元議員は、5日後の同月17日、再び質疑に立つと、「前夜祭」の会場として使用されたANAインターコンチネンタルに問い合わせて得られた回答文書を安倍前首相に突きつけた。安倍前首相はそれまで「明細書は受け取っていない」などと主張してきたが、辻元議員への回答のなかでANAインターコンチ側は過去7年間で明細書を発行しなかったケースは「ない」とし、「宴会代金を主催者ではなく参加者一人ひとりから会費形式で受け取ることはあるか」という質問にも「代金は主催者からまとめてお支払いいただきます」と明言したのだ。
このときのANAインターコンチの回答は、いまあらためてまったく正しかったことが証明されたわけだが、このとき安倍前首相は「それは、安倍晋三事務所が、ということですか?」「そうではないんだろう」と狼狽。その後、安倍事務所がANA側に確認した結果として「辻元議員にはあくまで一般論でお答えしたものであり、個別の案件については、営業の秘密にかかわるため、回答には含まれていない」と答弁、「私がここで話しているのが全日空側とのやりとりの真実だ」と主張して、「ANAの回答を書面で出せ」という野党の要求にも「信じていただけないということになれば、そもそも予算委員会(の質疑)が成立しない」「すでにコミュニケーションがみなさんとは成り立たない」とまで口にした。
しかし、なんとこの「やりとりの真実」だと言っていた答弁も「真っ赤な嘘」「捏造」だった。複数のメディアがANAに取材したところ、「直接(首相側と)話をした者が『一般論として答えた』という説明をしたが、例外があったとはお答えしていない。私共が『個別の案件については、営業の秘密にかかわるため回答に含まれていない』と申し上げた事実はない」(毎日新聞2月18日付)と回答したのだ。
本来ならば、辻元議員が突きつけた決定的な証拠で安倍前首相は詰んでいたのに、嘘に嘘を重ね、ANAのコメントの捏造まで働いていたのである。
この一件をとっても、安倍前首相がいかに自身の嘘によって予算委員会という重要な審議の場をぶっ壊し、コミュニケーションが成立しない場にしてきたのか、よくわかるというものだろう。