実際、このニコ生の冒頭部分を放送していたTBS系『ゴゴスマ』(CBCテレビ)では、「ガースーです(笑)」と菅首相が挨拶し終えた直後にニュース速報が流れ、〈東京で新たに595人が感染 1日の発表人数としては過去2番目 重症者67人〉というテロップが映し出された。そのテロップの数字と、緊張感もなく弛緩しきった菅首相の表情のコントラストは、まさしく地獄絵図だった。
だが、問題はそれだけではない。番組では「GoToトラベル」一時停止についての質問もなされたが、菅首相はあっけらかんと「まだそこは考えてません」と回答。「きょう(分科会から)提言を受けたわけですから」だの「西村(康稔)大臣を中心に、それぞれの首長とこれから調整をする」だのと述べ、対応までに2〜3日かかるとしたのだ。
いつもは「スピード感」をやたら強調するのに、提言を受けても「まだ考えてない」とは──。この間、分科会メンバーのみならず、東京都医師会の尾崎治夫会長も「GoTo」停止を求め、昨日には日本病院会が「GoTo」の即刻中止を求める声明を発表して「医療現場では、今でも重症者らの診療を必死に行っているが、感染拡大がこのまま続けば、医療崩壊は必至だ」と切実なメッセージを発信した。だが、現場の切羽詰まった声などお構いなしで、菅首相は「これから調整」などと述べたのである。
そればかりか、菅首相は分科会に責任を押し付けるかのように、こんなことまで言い出したのだ。
「いつの間にか『GoTo』が悪いことになってきちゃったんですけど、移動では感染しないという提言もいただいていたんです」
まったく何を言うのか。「いつの間にか悪いことになってきちゃった」などと言うが、「GoTo」開始時から感染拡大を危険視する専門家は少なくなかった。そんななかで分科会が政府の追認機関に成り下がって「GoTo」を許した責任は重く、医療崩壊が叫ばれる状況にまで陥ってから一時停止を求めても遅すぎるというのも事実だ。しかし、その分科会に睨みを利かせてきたのは、ほかならぬ菅首相だ。そして、ようやく一時停止の提言が出ても、自分の頑迷さや政治判断の遅さを棚に上げて「いつの間にか『GoTo』が悪いことになってきちゃった」とは、呆れてものも言えない。