ところが、吉村知事は反省するどころか、またぞろお得意のごまかし、スリカエをおこない始めた。
しかも、今度は、ありもしない自衛隊批判のでっち上げである。吉村知事は前掲のツイートで今回の派遣要請とは関係ない自衛隊員との写真をわざわざアップし、〈違憲のそしりを受けることがあってはならない〉などと言っていたが、いったい誰がこの局面でそんな批判をしているというのか。
自衛隊の災害救助活動を違憲と批判している人など見たこともないし、今回、自衛隊が大阪に人員を派遣することを違憲と批判する声など一切起きていない。批判されているのは、自衛隊派遣という事態を引き起こした吉村知事や維新のコロナ対応だ。
この「自衛隊が違憲扱いされている」というのは安倍晋三・前首相が9条改憲を正当化するために持ち出し始めた詐術だが、吉村知事の場合は改憲扇動ですらない。自分の失政を持ち出されたら反論できないから、ありもしない自衛隊違憲論をでっち上げて、目を逸らさせようとしているだけなのだ。「命がけで憲法9条の改正をやってくれ」とは笑わせる。
挙げ句の果てに、〈維新は命がけで都構想をやって大将の首をとられた〉ときた。「命がけ」って、命をかけさせられたのは、吉村知事や松井市長ではなく大阪府民だろう。
前述したように、吉村知事は第1波のときから、「イソジン」だの「大阪ワクチン」だの“やってる感”アピールばかりで、ろくな対策を取ってこなかったが、第1波が落ち着いてからはコロナ対策はほぼ放置して都構想にかまけてきた。
当初の基準に則れば7月に「赤信号」だったにもかかわらず、3回も大阪モデルの基準を変更。8月21日には、もし「赤信号」になったとしても都構想の住民投票を延期しないと強行を表明。感染拡大への注意を喚起することも、疲弊しきった医療体制を支援・整備もせず、都構想の選挙活動に夢中になっている間に、感染が拡大、深刻化していったのである。
実際、感染が再拡大していた8月の大阪府の新型コロナ死亡者数は62人(NHKまとめから算出。以下同)にもおよび、東京都の31人の2倍もの数に。9月も同様に東京都45人に対して大阪府は54人と上回った。さらに新規感染者数も、都構想の住民投票が行われた11月1日には大阪府が123人で、東京都の116人を上回った。
その後、死者も急増し、冒頭で述べたように、累積死亡者は9日時点で東京に次ぐ380人にのぼっている。
ようするに、維新の「命がけの都構想」とやらで、比喩でなく、多数の府民が本当の「命」を落としているのだ。