実際、官邸によるこうした世論誘導のにおいのする動きはもうひとつあった。6日夜の『news23』(TBS)でのことだ。
この日、同番組には文藝春秋の前「週刊文春」編集長で、“文春砲”生みの親として知られる現編集局長の新谷学氏がゲストとして出演。そのなかで、小川彩佳キャスターが学術会議任命拒否問題について、で杉田官房副長官がなぜ6人を外したと思うかと問うと、新谷氏はこう答えた。
「まあ、(杉田官房副長官の)経歴を見ていただくとわかるんですけれど。ものすごくオールドスタイルの、オールドタイプの公安警察官で。公安警察というのは、ようするに事件を未然に防ぐ、危険な思想を持ってるんじゃないかとか、そういった人たちをあぶり出して、事件を起こす前に取り締まって行くというのが、まあ公安警察官の仕事なので。まあ、実は今回の6人についても、ある情報機関がですね、いわゆる身体検査のようなことをやって、たとえば共産党との関係とか、あるいは中国との関係とか、を調査していると、そういう報告をあげているという情報もあってですね。それが、直接的に今回の任命拒否につながるのかどうか、さらに掘り下げて取材をする必要があるのかなとは思いますけど」
そう、新谷氏は任命拒否について、杉田官房副長官率いる公安が6人と共産党、中国との関係を調査、報告した結果であるかのように語ったのだ。
これらの噂については、これまでもネトウヨメディアが同じような指摘をしていたため、本サイトでも検証したことがある。だが、この6人と中国との特別な関係を物語る証拠はなにひとつ出てこなかった。共産党との関係も、「しんぶん赤旗」に登場しているとか、共産党も参加している政治運動に参加していたことがあるとかその程度にすぎない。宇野重規氏や加藤陽子氏にいたっては、「保守系学者」という評価が定着しているほどだ。
ネトウヨ評論家ならともかく、天下の「週刊文春」元編集長までがこんなフェイクまがいの発言をするとは……。
実は、この新谷氏の発言について、共同通信と同様、菅首相か杉田官房副長官に直接吹き込まれた結果ではないか、との見方が広がっている。
というのも、新谷氏と菅首相・杉田官房副長官との関係は有名で、これまで「公安を動かして集めた菅・杉田ラインのリークに乗っかって、政敵攻撃をさんざんばらまいてきた」との声があるからだ。