山中教授への恫喝、コネクティングルーム出張、さらには愛人が思い通りに動かせる組織にすべく人事や予算をちらつかせて圧力をかける──。まさに私利私欲によって行政を歪める「政治の私物化」にほかならないが、こうした問題が噴出していた今年2月、政府は大坪氏を「ダイヤモンド・プリンセス号」に派遣。大坪氏が感染対策で飲食が禁止になっている作業エリアにスイーツやコーヒーを持ち込んだり、マスクをしていない姿をしょっちゅう目撃され、注意を受けていると報じられ、さらなる批判を浴びることになった。
批判が巻き起こるのは火を見るより明らかだったのに、こんな人物を「ダイヤモンド・プリンセス号」に派遣する──。当初はこの配置は、安倍首相とのあいだにすきま風が吹いていた菅氏を牽制するための“厄介払い”と見られ、「サンデー毎日」(毎日新聞出版)9月27日号に掲載されているジャーナリスト・森功氏のレポートによると、ふたりは不倫問題の再燃によってコロナ対応から外され、このころには和泉氏は〈夏の人事で補佐官から退く〉とも噂されていたという。
しかし、この和泉氏のピンチも菅氏の“復権”によって様変わりする。今井氏ら経産官僚が主導した「アベノマスク」や「Go Toキャンペーン」、星野源に乗っかった「コラボ動画」などに国民の批判が集中し、代わりに菅氏が息を吹き返したからだ。そして、「サンデー毎日」によると、この菅氏の“復権”によって〈和泉・大坪コンビがコロナ対応の現場に復帰〉。大坪氏は8月の人事で厚労省子ども家庭局担当の審議官へ異動となったものの、〈今もなおコロナ対策に首を突っ込んでいる〉とし、和泉氏についても官邸関係者がこう証言している。
「和泉さんは現在、PCR検査の拡充とワクチン開発、それに特効薬の承認の推進を一手に引き受けています。クルーズ船で信用が失墜するどころか、むしろコロナ対策の要となっている」
“公費不倫”があれだけ問題になったというのに、何事もなかったように重要政策を取り仕切る立場に舞い戻っていた和泉首相補佐官……。無論、菅政権の誕生により、和泉氏の権限はさらに増大することになる。
今回の「官邸官僚」人事で今井氏の影響力が削がれたとしても、それはたんに今井氏から和泉氏に首が挿げ替わったにすぎない。これからは、菅−和泉首相補佐官体制によって、より強く官僚を支配下に置いた「恐怖政治」がはじまるだけなのだ。
(編集部)
最終更新:2020.09.16 07:52