──しかし、アマゾンの物流センターには横田さんより高齢の方も働いていることが本にも書いてあります。驚いたのは介護オムツの件でした。
横田 実際にどの人が介護オムツをしていたかは分からなかったのですが、男性トイレの個室に「おむつを流さないでください」という張り紙があり、「これ以上、続く場合は、やむを得ず、費用を請求することになりますのでご承知おきください」と。トイレ内にはおむつ専用のゴミ箱もありました。ということは介護オムツが必要な人が、経済的理由からか働いているということでしょう。他にも、定年退職した70歳近い男性や、高齢の介護が必要な母親を抱えた40代の男性がケアマネに電話している場面にも遭遇しました。
現場の貧困がひどいのは、ユニクロと比べてみてもアマゾンの特徴だと思いますね。ユニクロは主婦と学生のバイトがメイン。主婦なら夫、学生なら親の収入があるため、世帯年収はそこまで低くない。だからバイト時間を削りますと言われても「ああ、そうですか」と抵抗しない傾向があった。しかし要介護の母親を抱えた男性は、おそらく世帯の主な稼ぎ主です。もし妻がいて働いていたとしても、月収はせいぜい20万円ほどにしかならない。要介護者を抱えて余裕などないないでしょう。また生活保護を受けている夫婦が一緒に働いていたケースもあります。さらに驚いたのは、ホームレスかと思えるような人も働いていたことです。こうしたことは氷山の一角にすぎない。他にもっと悲惨なケースがあってもおかしくない。物流センターは貧困の縮図でもありました。
──アマゾンでは、作業中に亡くなった人もいたと聞いていますが。
横田 週刊誌経由でアマゾン社員からの内部告発があったことが発端でそれを知りました。小田原の物流センターが開設されたから4年で5人のアルバイトがセンター内で死亡したんです。しかしアマゾンの秘密主義からか、公にされてはいません。
しかも私がセンターでバイトする直前、作業中に50代の女性が亡くなったんですが、そのケースでは、倒れてから救急車が呼ばれたのは1時間も後だった。アルバイトリーダー、上司のスーパーバイザー、アマゾン社員など複数の人間がセンター内で電話をたらい回しにしたためです。周りのアルバイトは携帯電話持ち込みが禁止されていて救急車を呼べなかった。死因はくも膜下出血だったのですが、もっと早く救急車を呼べたら、助かった可能性もあったと思います。今回、その遺族の方にも話を聞いたのですが、 届いたのは3万円の香典だけ、その後もアマゾンからは連絡はないそうです。こうした死亡事例があるのに、アルバイトにも告知されず、あまり大きな問題にならない。マスコミもこれを報じない。赤旗が触れていた程度です。