河井案里氏の応援に入った安倍首相(河井あんりtwitterより)
やはり、逮捕された河井克行・前法相と案里参院議員の選挙は、安倍首相主導だった。
それをあらためて裏付ける新証言が出てきた。「しんぶん赤旗」(電子版6月21日付)が案里議員の陣営関係者に取材、安倍首相の地元事務所の秘書らが果たした役割に関する証言を報じたのだ。
周知のとおり、河井前法相と案里議員は昨年夏におこなわれた案里議員の参院議員選挙をめぐり、合計約2570万円の現金を地元議員らに渡したとして買収容疑で逮捕された。
逮捕を受け、安倍首相は「我が党所属であった現職国会議員が逮捕されたことについては、大変遺憾であります。かつて法務大臣に任命したものとして、 その責任を痛感しております。国民の皆様に深くおわび申し上げます」などと他人ヅラのコメントをしていたが、どういう神経をしているのか。
本サイトでも繰り返し報じてきたように、今回の河井夫妻の違法選挙事件は安倍首相の関与が強く疑われる“安倍案件”であり、違法選挙は安倍自民党ぐるみ、安倍首相主導だったのではないかというのは最大の焦点のひとつだ。
それを示すのが、自民党本部が河井夫妻それぞれが代表を務める政党支部に振り込んだ異例の1億5000万円、そして案里氏の選挙に指南役として投入された安倍事務所の秘書たちの存在だ。
これまでに、安倍首相の地元事務所の筆頭秘書をはじめ少なくとも4人の秘書が、案里容疑者の選対に投入されていたことがわかっている。
安倍事務所の秘書は具体的にどのような活動をしていたのか。今回、赤旗は実際に安倍事務所の秘書と活動をともにした案里陣営関係者の証言を報じたのだ。
その陣営関係者は、安倍事務所の秘書と一緒に4日間かけて広島県内の企業40〜50社を訪問したといい、その際の様子について、こう証言している。
「名簿を片手に事前の約束もなしに回りましたが、社長さんに応対してもらえた企業も多かった。秘書は『安倍晋三事務所から来ました』と名刺を差し出してあいさつしていました。相手も総理の秘書だということで好意的な反応だった」
アポなしで回っても、わざわざ社長が出てきて対応。これは、明らかに「安倍晋三事務所」という名前の威光によるものだろう。
案里氏が立候補した広島選挙区ではもともと現職の溝手顕正候補が単独で立候補する予定だったにもかかわらず、安倍首相の鶴の一声で新人の案里氏を2人目の候補として擁立。広島県連の意に反し自民党本部がゴリ押ししたものだ。そのため、すでに県内の企業や地方議員の多くは溝手支持で固まっていた。いくら国会議員とはいえ、パワハラ体質で人望がないことで有名な克行前法相の名前だけでは、その溝手支持を突き崩すことは無理だっただろう。そこに、「安倍晋三事務所」の名前を存分に利用することで割って入ったということになる。
安倍事務所の秘書が、いかに案里議員の選挙に深く関与し大きな役割を果たしていたか──。そのことを証明する、きわめて重要な証言だ。
さらに23日放送の『バイキング』(フジテレビ)では、溝手陣営からもこの赤旗報道を補強する証言が飛び出した。
広島県連の県議A氏が『バイキング』の取材に対して、こう証言したという。
「選挙が終わった後、みんなで企業に挨拶回りしたら、溝手さんを応援していた企業の元に安倍首相の秘書が来ていたことがわかったんです。話を聞くと「案里さんを応援してほしい」と頼まれたと。みんな溝手さんを応援しなくていいのだと勘違いをしていたみたいです」
溝手支持で固まっていたはずの企業を、安倍首相の秘書が直々に訪れ、案里支持にくら替えさせていたというのである。
また、赤旗の報道によれば、〈首相の秘書は公明党の支持母体である創価学会の施設や公明党市議の自宅も訪問。「選挙区では河井案里をよろしく」と支援を依頼していた〉という。公明党は溝手・案里両名を推薦していたのだが、「選挙戦の序盤は現職の溝手さんが優勢だったが、案里陣営には公明党の票が入れば勝てるという確信があった」と陣営関係者は語っている。
いずれも、票の上積みというより、もともとある与党票を溝手氏と分配するのではなく案里氏に集中させようという動きだ。
つまり、安倍事務所の秘書がやっていたことは、安倍首相や党本部が表向き説明していたような「2人擁立することで票を上積み」ではなく、溝手支持を切り崩して溝手票を奪うことだったのだ。