たとえば加藤氏は10日、「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグの急増を伝える海渡雄一弁護士のツイートを批判する形で、こんな投稿をしていた。
〈どう考えても150万とか200万とか〔のハッシュタグのツイート数〕が事実ならば、裏で糸を引いている奴がいるのだろう。もしかしたら、中国とつながっているかも知れない。そういう怖さを今ひしひしと感じている。中国はなりふり構わず、日本を取りに来ている。呼応する日本人がいかに多いか。政界官界経済界マスコミ法曹界にも。〉
検察庁法改正案に反対するのが「中国とつながっている」「中国は日本を取りに来ている」って、この人は何を言っているのだろう。あえて真面目に突っ込んでおくが、だいたい安倍政権はいま、経済政策や習近平国家主席の「国賓来日」をはじめとして、いま、東アジア情勢のなかで表向き親中的な姿勢をとっている。その安倍政権がやろうとしている検察庁法改正案にどうして中国が政治的な思惑で介入しようというのか。まったく、論理も政治勘もへったくれもないだろう。こんな人が数年前まで時事通信で「特別解説委員」を務めていたとか、同じ釜の飯を食った田崎史郎氏といい、いったいどうなっているのかと聞きたくなってくるではないか。
だが、安倍応援団という一種の“メルヘン空間”では、こうした中国陰謀論が当たり前のようにまかり通っている。というか、安倍政権の政策や不祥事に市民から批判が集まるたびに、安倍応援団文化人たちは「中国の脅威」を吠えて、目線を変えようと必死に足掻くのだ。
加藤氏だけではない。近年、すっかり右派論壇の一員となった著述家の竹内久美子氏も「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグの盛り上がりに対して、10日、荒唐無稽な“中国陰謀論”をがなり立てていた。
〈ここ数日の尖閣侵入の本気度、今日の芸能人がいっせいに「検察庁法改正案に抗議」の動きを見て、中国が本気で日本をとりにきている、いやまず試しおったなと思った。負けないぞ!えいえいおー!〉
「いやまず試しおったな」って頭が悪すぎて言葉を失うが、とにかく、安倍応援団の頭のなかは「安倍政権批判に負けないぞ!えいえいおー!」というレベルであることは確からしい。
他にも、あの百田尚樹氏は〈安倍政権を叩きたいだけの野党は、本当は問題ではないのを知りながら「問題だ!」と騒いでいるのはいつものことだが、頭の悪いタレントは、本気で批判しているからイタイ〉〈しかし気になるのは、これらのバカタレントを大量に動かしているのは誰かということ。この黒幕は誰なんだろう。テレビ局?〉と“テレビ局黒幕説”を展開。百田センセイは普段、テレビ局や芸能人が政権への忖度、スポンサーやファンの目を気にしていかに政治的発言を控えているかご存知ないのか。それでも、今回はさすがのひどさに「おかしいものはおかしい」と声をあげざるをえなくなった芸能人が続出しているというのが真相なのである。
それを、どういう思考回路をしたら“テレビ局が芸能人や文化人に指示して政権批判をさせている”みたいなロジックが成り立つのか、本気で頭が痛くなってくる。