公共放送なのに中立じゃないなどという攻撃をしているネトウヨが多いが、言うまでもなく、放送法における政治的中立というのは、時の政権からの介入を防ぐためのものであり、政権批判は偏向でもなんでもない。だいたい、問題の「バリバラ桜を見る会」は多様性の尊重が主題であり、それが「反政府」に見えるというのは、多様性やマイノリティを踏みにじることばかりしている安倍政権の問題だ。
また、緊急事態宣言とも関連するが、小野田参院議員が持ち出している「困っている国民が利用できる制度や申請の方法をもっと流すべき」という理屈であれば、すべてのバラエティやドラマなど報道以外の番組の放送全体でのバランスを見るように言うならまだしも、特定の番組をあげつらう話ではないだろう。
ましてや、こうした緊急事態宣言下という社会状況にあるからこそ、普段以上に権限を発揮しうる政権に対して、普段以上に厳しくチェック・批判するのは、報道の当然の役割ではないか。
さらに「バリバラ桜を見る会」では、多様性に逆行する動きに関して議論するなかで、伊藤さんと崔さんが新型コロナウイルスに乗じて起きている差別問題についても警鐘を鳴らすなど、現在の日本において非常に意義のある発信があった。NHK含めいま多くのテレビ局が流している過去のドラマやバラエティ、スポーツの再放送などより、はるかにいまコロナ禍のもとでだからこそ放送されるべき内容だった。(詳しくは既報で→https://lite-ra.com/2020/04/post-5390.html)
それが、不可解な再放送中止によって、観る機会が奪われたというのは許しがたいことだ。あらためて、再放送を設定してもらいたいのはもちろんだが、気になるのは、30日夜に予定されている「バリバラ桜を見る会」第2部の放送だ。この第2部は、きちんと放送されるのだろうか。あるいは内容が改変されるようなことはないのだろうか。
NHKでは政治報道が官邸と政治部に牛耳られるなか、圧力に晒されながらも真っ当な調査報道や政権批判を試みる社会部や『クローズアップ現代+』『NHKスペシャル』、あるいは五輪至上主義と歴史修正主義にNOを突きつけた『いだてん』のようなドラマなど、ギリギリのところでなんとか視聴者・読者にとって価値ある放送を続けようとする番組もある。『バリバラ』もまさにそうした番組のひとつだ。
『バリバラ』には圧力に負けず第2部を放送してもらいたいが、『バリバラ』スタッフの力だけではかなわないかもしれない。NHKに残された数少ない良心を潰させないためにも、視聴者は大きな声をあげなければいけない。
(編集部)
最終更新:2020.04.26 10:50