そして、こうした動きに乗っかってきたのが自民党の同じくネトウヨ議員・小野田紀美参院議員だった。小野田議員は放送翌日の24日、上述の「Share News Japan」の記事を引きながら「ぜひお時間あったらNHKの公平性を欠いた低俗な番組について、追及して頂けないでしょうか?」というご注進リプに答える形で、以下のようにツイートした。
〈「政治家がメディアに圧力をかけた!」と言われる事が容易に想像できますが一言だけ。電波という国民共有の財産を使用し、税金を投入して運営している放送局が、この非常時にこんなもの作る時間があったら、今困っている国民が利用できる制度や申請の方法(全然報道されず)を1秒でも多く流すべきでは?〉
小野田議員といえば、3月5日の参院予算委員会で質疑に立った際、トイレットペーパー不足や日本国内感染者の数にクルーズ船感染者数を含めて1000人超えとNHKを筆頭にマスコミが報じていることを「事実と違う報道だ」と憤った挙げ句、総務省に対して「(マスコミを)指導しろ」「デマを流した人に罰則を」などと口にしていたばかり。「政治家がメディアに圧力をかけた!といわれる」などと予防線を張りながら、しっかり圧力をかけてきたというわけだ。
いまのところ表立った政治家の動きはこの小野田議員くらいだが、裏ではNHKに安倍官邸から様々な圧力がかかっていたというのは想像に難くない。
実際、これまでも、安倍首相と岩田明子記者のホットライン、あるいは菅官房長官とNHK上層部のパイプなど、安倍官邸はあらゆるチャンネルを通じて、NHKの報道に圧力をかけてきた。加計問題を告発した前川喜平・元文科事務次官の告発インタビューお蔵入り、森友問題でスクープを連発していた相澤冬樹記者の左遷、『クローズアップ現代』国谷裕子キャスター降板……例を挙げ始めたらキリがない。
ちなみに、安倍首相個人でいえば、2001年にNHKが放送した日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷を取り上げたETV特集『問われる戦時性暴力』に対し、内閣官房副長官だった安倍氏と自民党の中川昭一衆院議員(故人)のふたりが放送直前に政治的な圧力をかけ、その結果、番組が改変されたという事件もあった。このとき、安倍首相は「勘ぐれ、お前」という直接的ではない脅し文句で圧力をかけてきたことを、当時面会した放送総局長が証言している。
加えて、今は緊急事態宣言下にある。新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)では、緊急事態宣言が発出されると、NHKは「指定公共機関」とされ、政府対策本部長(総理大臣)がこの指定公共機関に〈新型インフルエンザ等対策に関する総合調整を行うことができる〉とある。さらに、〈総合調整に基づく措置が実施されない場合〉には総理大臣が指定公共機関に〈必要な指示をすることができる〉と規定されている。
NHKが政権からの介入に普段以上に神経質になっている状況で、緊急事態宣言に伴う規定を拡大解釈し、あるいはちらつかせて、圧力をかけた可能性も十分にあるのではないか。