よく言った大賞!上田晋也と村本大輔(左・TBSテレビ公式サイト/右・昨年12月の『THE MANZAI』)
圧力や攻撃に怯まず、仕事を干されるリスクも顧みず、言うべきことを言った芸能人に、リテラが贈る「芸能人よく言った大賞」。10位〜6位、そして特別賞を発表した前編に続き、この後編では5位〜2位、そして大賞を発表しよう。今回は、イケメン俳優に、政治的発言とは無縁だと思っていた大物司会者、ビジュアル系といわれていたバンドも登場。毎年上位に顔を出す反権力芸能人も感動ものの発言をしているので、是非、最後まで読んでほしい!
5位 松坂桃李
多くの芸能人が出演を拒否した望月衣塑子原案の“政権批判映画に出演した人気俳優の勇気と覚悟、そして功績
5位にランクインしたのは、俳優の松坂桃李。ランクインの理由は、東京新聞の望月衣塑子記者の同名ノンフィクションを原案にした『新聞記者』の主人公のひとりを演じたことだ。
何か具体的な発言をしたわけではないが、松坂のようなメジャーシーンで活躍する人気俳優がこのチャレンジングな映画で主演を務めたということは、賞賛に値するだろう。
本サイトでも公開当時紹介したが、映画『新聞記者』がチャレンジングだったのは、フィクション作品ではあるが、ここ数年のあいだに安倍政権下で起こった数々の事件をまさに総ざらいし、あらためてこの国の現実の“異常さ”を突きつけたこと。そして、その“異常さ”の背後にある、官邸の“謀略機関”となっている内閣情報調査室の暗躍を正面から描いたことだ。
微妙な設定の違いはあるものの、この国で実際に起こった森友公文書改ざん問題での近畿財務局職員の自殺や、加計学園問題に絡んだ前川喜平・元文科事務次官に仕掛けられた官邸による謀略、伊藤詩織さんによる性暴力告発などをモチーフとするエピソードがいくつも描かれた。
なかでも衝撃的だったのが、官邸と一体化した内閣情報調査室の暗躍ぶりを描いたことだ。政権の方針に反抗的な官僚のスキャンダルをマスコミ関係者にリークしたり、“総理べったり記者”による性暴力と逮捕もみ消しを告発した女性のバッシング情報をネットに投下したり、といった工作は、北村滋内閣情報官が率いる内閣情報調査室の謀略そのものだった。
そもそも政治を題材とした映画は数あれど、現在進行形の政権(の不祥事)を題材にすることは稀だ。しかも、現在の安倍政権は言論弾圧体質で、政権に不都合な報道に対して陰に陽に圧力をかけることで知られる。そんななか映画『新聞記者』は、安倍政権の現在進行形の不祥事や官僚支配、謀略体質を題材にしたのである。
そして、この内閣情報調査室のエリート官僚を演じたのが、松坂桃李だった。上司からの命令と、官僚としての理想や良心との狭間で葛藤・苦悩するエリート官僚を好演した。
このような映画に出演することは、俳優にとってもリスクが高いことは言うまでもない。もうひとりの主人公である女性新聞記者は『サニー 永遠の仲間たち』などで知られる韓国の実力派女優・シム・ウンギョンが務めたが、当初日本の女優にオファーしたが断られるなど、キャスティングが難航したとの報道もあった。
もちろん、松坂自身もリスクはわかったうえで、この映画に出演している。「日刊スポーツ映画大賞」作品賞受賞の壇上で松坂はこのように語っていた。
「『これが公開されたら、僕らいないかもね』とプロデューサーに言われていました。無事公開できればいいなという思いが強かった」
結果的に『新聞記者』は興業収入4億円を突破。このような硬派な映画としては画期的な成績だが、これは、安倍政権に不信感を持つ人の多さに加え、質の高いエンターテインメントに仕立て上げた製作陣・キャスト陣の手腕、なかでも松坂というメジャー俳優が主人公を演じたことで、メジャーシーンへと押し上げポピュラリティを獲得したことにあるだろう。
前述した日刊スポーツ映画大賞・作品賞の受賞に続き、ブルーリボン賞でも作品賞と主演男優賞にノミネートされるなど、賞レースでも注目を集めている松坂。映画『新聞記者』が突きつけたものが、またあらためて多くの人に届くことに期待したい。