これは明らかに意図的な隠蔽だろう。というのも、この一件は日本消費経済新聞がスクープしただけでなく、国会でも質問されているからだ。
1月30日の衆院予算委員会で希望の党の大西健介議員が質問している。大西議員はジャパンライフ問題で加藤厚労相や二階幹事長を追及するなかで、資料を示しながら「だれもが知っているようなマスコミの解説委員クラスの方々の顔写真と名前も載っています」と指摘。また「ジャパンライフは他にも顧問とかに有名な方を招き入れることで顧客の信頼を得ようとしてるんです。官僚のOBとかですねマスコミ関係者とか」とも発言している。
ところが、本サイトが調べた限り、大西氏が指摘した“マスコミの解説委員クラスが宣伝に使われている”という事実は、大西氏の発言があった1月30日の衆院予算委から現在に至るまで、新聞もテレビもほぼ完全に無視しているのである。
だが、マスコミ幹部クラスやOBがジャパンライフの“広告塔”になっていた事実を軽く見ることはできない。関係者が同社に関与していたことでジャパンライフ問題の報じ方になんらかの影響が出た可能性があるからだ。
日本消費経済新聞の取材に対し各社は、「報道への影響はまったくない」(時事通信社社長室)、「適切な報道に努めております」(毎日新聞社社長室広報担当)、「当社の報道に影響を与えたことは一切ありません」(日本経済新聞社広報室)などと口を揃えている。しかし、本当に報道への影響がないと言えるのか。
そもそもジャパンライフ問題では、事実上倒産した昨年末以降、ようやく各紙やテレビもそれなりに報道するようになったが、それまで、消費者庁より2016年末から計4回の業務停止命令を受けた経緯や、その事業の問題点を深く追及する報道はほとんどなかったと言っていい。事実、本サイトが検証した限りでは、倒産の端緒となった16年12月の業務停止命令については朝日、毎日、日経が数百文字のベタ記事で、NHKがごく簡単に報じていただけだった。
また、消費者庁による最初の処分は、実のところ消費者庁が立入検査をした2015年9月から1年以上も遅れたものだった。昨年4月の時点で、国会でも処分が遅れた背景として官僚OBの天下りや加藤大臣の“広告塔”問題が指摘されたが、これを取り上げたのは「しんぶん赤旗」や本サイトなどごく一部だけで、大手紙やテレビは当然のようにスルー状態であった。
そう考えてみてもやはり、マスコミ各社の「報道に影響は全くない」との言い分は信じがたいのだ。また、仮に懇談会が山口会長の主催だと知らなかったとしても、それは被害拡大に加担したことへのエクスキューズにすらならないだろう。
裏を返せば、マスコミの幹部クラスや政治記者たちは、有力政治家とのなかよし懇談会が常態化するなかで、その関係を利用される危険性に対する警戒心が完全に薄れている。そのことが、このジャパンライフの広告塔問題で露呈したとも言えるのではないか。いずれにせよ、マスコミは傍観者ではない。自らの立場と責任をよく自覚したうえで、あらためて“広告塔”問題を報じるべきだ。
(編集部)
最終更新:2019.11.27 11:14