韓国政府も世論対策としていろんな情報が流しているから、鵜呑みにはできないが、今回の韓国政府の抗議に対して見せた安倍政権の“弱腰”を考えると、これに近い「合意」があったと見るべきだろう。
実は、そのことは日本側がGSOMIA延長決定直後に発表した内容からも見て取れる。前述したように日本政府は「GSOMIAと輸出管理は別問題」として「WTOの提訴中断」だけを強調していたが、GSOMIA延長と同時に、貿易問題の合意を発表したというのは、輸出規制の解除問題が条件になっていたとしか考えられない。
さらに、この発表内容からは、安倍政権がアメリカの圧力だけでなく、もともと輸出規制解除に応じざるを得ない弱みがあったことも見て取れる。
安倍政権は輸出規制や「ホワイト国」除外を、実際には徴用工問題への報復であるにもかかわらず「安全保障上の問題」「貿易管理体制に不備があった」などと言い張ってきた。その姿勢に自信があるならば、「どうぞ好きに提訴してください」となるはずなのに、韓国がWTO提訴を止めることを求め、それを勝ち取ったことを誇ったのである。これは、日本政府も、「WTOに提訴されたら『徴用工問題の報復』であることが指摘され、貿易問題を政治問題に利用したということで負ける可能性が高い」と判断したからだろう。
いずれにしても、こうした裏側をきちんと見れば、政権が吹聴している「パーフェクトゲーム」「一切妥協しない」という勇ましい言葉が、いかに国内向けのデマゴギーであるか、よくわかるというものだろう。逆に言えば、安倍政権はどれだけ外交上の敗北を喫しても、マスコミさえ押さえて大本営発表をしさえすれば、いくらでも有権者を欺けるとタカをくくっている。そういうことらしい。
事実、この段になっても、マスコミの安倍応援団は「安倍政権の大勝利」をがなり立てている。たとえば、本日26日放送の『ひるおび!』(TBS)では、元駐韓大使の武藤正敏氏が「アメリカの圧力をもって、(韓国が)とにかく日本にベタ降りしたんだっていうのが実態でしょ」「(文在寅大統領は)とにかくアメリカに強引にやられた。で、彼はそれを日本に完全敗北したってことを隠そうとしてるわけでしょ。それは結局どっかでもってバレるわけですよね」などと“韓国の完全敗北”を唱えた。また、八代英輝弁護士も、韓国政府の抗議について「おそらく日本側の筋が、周囲の状況から考えても、正確に伝えているんだろうと思う」と無根拠に安倍政権を擁護していた。
おそらく、テレビをはじめ、安倍応援団が跋扈する日本のマスコミでは、今後も「安倍首相が韓国を叩きのめした!」なる空疎な凱歌が響き続けるだろう。GSOMIAや輸出規制問題そのものとは別に、その予期される状況は、まるで連戦連敗を喫しながら「架空の戦果」を報じた戦中のメディアのようですらある。国民はいい加減、安倍政権の政治宣伝と情報操作の詐術に気がつかなければならない。
(編集部)
最終更新:2019.11.26 11:29