しかし、これ、完全にフェイクなのだ。そもそも、自衛隊の消火ヘリは山火事などの大規模火災に出動するもので、都市部の火災には適しておらず、実際、投入されるケースはほとんどない。要請を検討しないのは当たり前なのである。
実は、当の産経も記事の本文を読むと、「ヘリでの消火活動は数トンの重さの水を落とすので、周辺への影響もある。都市部ではヘリによる消火活動はできない」という県の担当者のコメントを掲載しているうえ、地の文でも〈首里城火災のケースではヘリコプターの活用は難しいのが実情だ。〉とはっきり書いてあった。
ようするに、産経は首里城火災が自衛隊出動に適した火災でないことをわかっていながら、タイトルやツイッターでは、あたかも沖縄県が政治的な理由や怠慢で検討しなかったかのように煽ったのである。
この報道には、地元でも批判が巻き起こっている。沖縄タイムスの阿部岳記者もツイッターで〈産経新聞、あんまりだ。ツイートを削除し記事に沿った内容に改めてください。〉と、ツイートしていた。
しかし、産経は明らかに確信犯だろう。災害時の「自衛隊に出動を要請しなかった」「自衛隊出動を妨害した」といったデマは、阪神淡路大震災のときの村山富市首相、阪神大震災や東日本大震災のときの辻元清美氏など、リベラル系政治家に対する攻撃の定番となっている。辻元清美のケースでは、まさに産経が裁判で訴えられ、名誉毀損、事実無根であることが確定している。今回もそのパターンを狙ったものの、事実関係は全く違っていたため、タイトルとツイートでフェイクを拡散したのではないか。
これまでも安倍政権を擁護するため、野党や批判勢力に対するデマを散々振りまき、沖縄では米軍基地反対派へのフェイクを拡散し続けてきた産経新聞。しかし、首里城火災という事件まで利用するとは、その悪質さはほとんどネトウヨ系ニュースサイトと同じレベルになってしまっているという他ない。
(編集部)
最終更新:2019.11.03 01:09