財務省がここまで事細かく“追い出し”の制度に口出ししていたのだから、そもそもの自主避難者への支援打ち切りという大方針、そして今行われようとしている国家公務員住宅に住み続ける自主避難者への訴訟などの強硬姿勢も、国が主導したと考えるのが妥当だろう。
実際、打ち切りが決まった2017年4月、当時の復興相だった今村雅弘は打ち切りについて、「自己責任」「裁判でも何でもやればいい」と言い放ち、追及したフリージャーナリストに「うるさい!」「(発言を)撤回しなさい! 出て行きなさい!」と激昂、そのまま怒鳴りながら退席するという醜態を演じて、問題になった(ちなみに今村氏はそのすぐ後、「まだ東北で、あっちの方だったから良かった」と差別的暴言を吐、復興相を辞任している。
しかも、支援打ち切りは自主避難者に対してだけではない。同時期に、原発近くの8つの地区に出ていた避難指示を次々解除、そのために年間被曝限度を国際基準「1ミリシーベルト」の20倍、「20ミリシーベルト」にまで引き上げた。ようするに、支援を打ち切るために、被災者に健康被害のリスクを背負わせてまで強制帰還させる政策を打ち出したのだ。
これらの政策については、国連でも問題視されている。強制帰還政策については、2018年10月の国連人権理事会で、避難解除の基準値「20ミリシーベルト」について「1ミリシーベルト」に引き下げ帰還政策を見合わせるよう要請され、また住宅無償提供などの公的支援打切りの方向性についても自主避難者に対し帰還を強制する圧力になっていると指摘された。
だが、国内ではどうか。国の原発政策が引き起こした事故で住まいを追われた人たちの生命や生活をさらに危機に晒すようなとんでもない棄民政策が進行しているというのに、批判の声は全く聞こえてこない。暴力団の密接交際者である人物が復興大臣に就任して「自主避難者は担当外だ」などと職務放棄発言をしても、責任を問う動きは全くない。
そして安倍政権に乗せられて、震災や原発事故なんてなかったかのように、ラグビーW杯だ、オリンピックだと大騒ぎを繰り広げている。安倍政権の7年間で、日本は弱者のことなんて誰も見向きもしない、とてつもなく残酷な国になってしまったようだ。
(伊勢崎馨)
最終更新:2019.09.22 09:59