前述した河野外相が韓国大使との面会冒頭、いきなり「極めて無礼だ」と怒鳴りつけた件も、明らかに面会冒頭にカメラが入っていたことを意識したものだ。河野外相はカメラを意識して「韓国大使に強く出る俺」というパフォーマンスに出たのである。
世耕経産相も同じだ。経産省は7月12日に韓国側と事務レベル会合を開いたが、その会場は、片隅に荷物が積み上げられた狭く殺風景な会議室。しかも、韓国側がスーツにネクタイ姿であるのに対し、経産省担当者はノーネクタイの半袖カッターシャツ姿で、あきらかに韓国側を軽んじる露骨な態度に出た。このことについて、世耕経産相は「月刊Hanada」で「経産省の会議室なんてあんなものですよ(笑)」などと答えているが、当然ながらもっとマシな会議室は存在する。河野外相と同じで、カメラの前で「韓国側が来訪しても我々は洟も引っ掛けない」と強調してみせたのである。
まったく姑息で大人げなく、これこそを「感情的」と呼ぶべきだが、主務省庁の閣僚がこのような完全にタガが外れた強硬な姿勢に出ているのは、世論へのアピール以上にもっと大きな理由がある。それは、安倍首相に対する“得点稼ぎ”だ。ベテラン政治評論家が解説する。
「安倍政権の閣僚たちはいま、次の内閣改造で生き残るために、首相や官邸のご機嫌とりに必死だからね。なかでも、韓国に対して、少しでも妥協的な姿勢をとると、官邸から『弱腰すぎる』とクレームが来るため、競うように喧嘩腰になっている。とくに河野外相の場合は、安倍首相が否定・撤回に躍起になってきた『河野談話』の河野洋平・元官房長官を父に持つこと、そして、今回の徴用工問題では、外務省が安倍官邸のリクエストに応じた韓国への報復措置を取れなかったことへの負い目がある。それをカバーしようと、どんどん過剰になっているんだよ」
河野外相が負い目を感じているという「外務省が韓国への報復措置を取れなかったこと」については、読売新聞が8月29日付で記事にしている。
〈今回の輸出管理厳格化について、外務省で日韓関係を担当するアジア大洋州局は相談を受けなかった。経済産業省幹部は「外務省が韓国人に対する査証要件厳格化といった『対抗措置』をやらないから、経産省が引き取った」と明かす〉
さすがは御用新聞なだけあり、読売はこんなとんでもない裏事情をツッコミもなく書き綴っているが、つまり徴用工問題に対する報復として、当初は外務省に韓国人のビザに制限をかける対抗措置をとらせようとしたものの、外務省がそれをおこなわなかったことから、経産省が代わって輸出規制をおこなった──というのだ。