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「大阪の街場」にこだわってきた名物編集者が分析する維新人気の正体とは?

江 弘毅  わたしが“維新とW選挙の検証本”を編集した理由──「おもろい」維新が大阪の街の「おもろい」を壊す

 けれども、維新の「おもろさ」は、大阪が本来持っている「おもろさ」とは根本的に違う。

 長年、大阪の街の「おもろい」について雑誌メディアを中心として編集し書いてきた。言うまでもないが「おもろい」というのは、テレビのバラエティ番組でお笑いタレントが人を笑わせる「おもろさ」のことではない。

 具体的には大阪の街場のうまいもん屋や酒場などについてであり、大阪の「現場」で長い間かけて実生活で培われた客との接触の仕方、つまり大阪人が他者と関わる際の作法、ものの感じ方や表現の方法なのであり、それをあれこれと抽出して書いてきた。

 われわれは街場で皿の上の料理やショーウインドウの中の衣料品など商品をカネで買っているのだが、その「交換」の際には必ずコミュニケーションがある。

 大阪の飲食店は「一見さんでも常連客扱い」するし、タクシーに乗れば頼んでないのに天気予報や野球の経過を教えてくれる。つまり交換原理からどうしょうもなくはみ出る「贈与的」なものが、「おもろい」かどうかなのである。

 それはまず第一に「あなたとわたしはディールするだけではなく、同じこの街の仲間なのだ」という意思表示であり、だからこそ同じ街場の小屋や寄席で「人を笑わせる商売をする」落語家や漫才師などの芸人は、「商売」を離れても街の人気者でなければならぬ。

「お笑い百万票」などと言われる大阪は、横山ノックを参議員議員と府知事、西川きよしを参議員議員に選んだ土地柄だ。「できることからコツコツと」と言って国会議員になったきよしは、かろうじて街場の旧い芸人である。

 小屋や寄席でカネを払う側のわれわれは「現場」での話芸に「ええぞ」と喝采し、悪かったら容赦なく「引っ込め」とヤジを飛ばし、「もうアンタの話はええわ」とばかり居眠りをしてしまう。

 横山やすしでも同じ街場の一員。寄席の外でもおもろいことをぶっ放せば「さすが天才や」と肩を叩きにいくが、もし殴られたら蹴り返しもする。

 けれどもここ20年で「街場の芸人」は「テレビのタレント」になった。「大阪の街の小屋」から「東京のテレビ局のスタジオ」へ「場」が変わったのだ。街場の相互的コミュニケーションから一方向なテレビ的それへと転換したのである。

 その変化に少し遅れて登場したのが維新であり、橋下徹氏だった。 

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