テレビや新聞でも取り上げられて問題になっているのに、党を代表する総裁が「見てない」「知らない」って。しかし、まあ一応はこういう冊子を配ることを安倍首相も「無責任」だと認めるのか……と思いきや、じつはこの安倍首相が言った「無責任」というのは、問題の冊子のなかからフリップに抜き出された「枝野代表の無責任を嗤う」という見出しのこと。ようするに、安倍首相はトンデモ冊子の主張をそのままテレビで肯定してみせたのである。
フェイクを振りまくトンデモ冊子を配布したことの責任はおろか、冊子と同じように「(枝野代表は)無責任だと思いますよ」とテレビの党首討論で言い出す総理大臣……。もはや絶句するしかないが、さらに驚いたのはこのあと。安倍首相は枝野ディスのあと、間髪入れずに、こうつづけたのだ。
「たとえば、立憲民主党と言いながらですね、憲法9条について統一候補を選んでいるにもかかわらず、共産党は『自衛隊、違憲だ』って言ってますね。で、枝野さんは合憲だと言っている。立憲なんだから、憲法の根本、安全保障の根本じゃないですか。それなのに、それを横に置いておいて統一候補っておかしいでしょ。とくに、福井県においては立憲民主党は候補者を擁立しない、島根、鳥取もそうですよね。共産党の候補者を、応援している。枝野さんに訊きたいんですけど、枝野さん、福井県に住んでいたら、共産党の候補者に入れるんですか?」
冊子の話だったのに、いつのまにか野党共闘に難癖をつけはじめる──。まさしくトンデモ冊子を地でゆく安倍首相の話のすり替えぶりに、さすがにスタジオは一瞬ポカンと無言になったほど。そして、“いや、話が違うだろ”といった感じで一気にスタジオがざわつき、小川キャスターも元の話題を戻そうとしたのだが、安倍首相はその進行を遮り、こうまくし立てた。
「ちょっとねえ、そのマンガ(挿絵)なんかより、大切なことじゃないですか」
「マンガなんかよりも」って、アンタたちが配っている冊子なのに……。こうして安倍首相は必死になって野党統一候補が問題だと叫びつづけたのだが、一方の枝野代表は「生活防衛こそがいまの国民のみなさんのいちばんのテーマであり、その点で一致している」「安保法制は違憲であり変えるべきだということできちっと合意している」と冷静に反論、「何もどこか指摘されるような問題があるとはまったく思っておりません」と淡々と返答した。