たとえば2015年には、国立大学における国旗掲揚・国歌斉唱に関して「(大学が)税金によって賄われているということに鑑みれば、言わば新教育基本法の方針にのっとって正しく実施されるべき」(4月9日参院予算委)と答弁。その2カ月後、安倍首相の片腕である当時の下村博文文科相は、全国の国立大学の学長に対して卒業式・入学式での「日の丸」掲揚・「君が代」斉唱を実施するよう事実上の要請をした。
さらに、2017年2月に厚労省が公表した「保育所保育指針」改定案には、3歳以上の幼児に対象に「保育所内外の行事において国旗に親しむ」ことや、「正月や節句など我が国の伝統的な行事、国歌、唱歌、わらべうたや我が国の伝統的な遊びに親しんだり」と新たに記載。この保育所保育指針は実際に2018年に施行された。同年には、文科省も「幼稚園教育要領」改定案でそれまでにあった「国旗」だけでなく「国歌」への「親しむ」を追加していた。
もはや、完全にマインドコントロールの域だろう。安倍政権は、戦中の天皇礼賛の意味も知らない幼児たちに「君が代」を刷り込ませようとしている。そう受け止めるしかない。
こう言うと、必ずネット右翼や安倍応援団たちは「国民が日本国旗と国歌に敬意を払って何が悪い」「日本人として当たり前の愛国」「命令に従わない公務員は処分されて当然」などと言い出すが、「日の丸」「君が代」をめぐる問題は個人の思想信条の問題だ。よく考えてほしい。国歌斉唱や国旗に起立をしないことが、いったい誰の権利を侵害しているというのか。
むしろ、こうしたネトウヨたちの声こそ、安倍政権が拡大しようとしている「日の丸」「君が代」強制の本質を示しているだろう。ようするに、それは「国家に服従しない人間は反日である」という国家権力による圧力なのだ。究極的に向かう先は、どれだけ個人が嫌だと思っていても「お国のために死に、お国のために殺す」ことを強いられた戦中の再現に他ならない。
その意味でも、今回のILOによる是正勧告は極めて重要だ。これまでどれだけ国際社会から指摘されても、都合の悪いことはほとんど無視してきた安倍政権の体質を考えると、勧告を素直に受け入れるとは思えないが、少なくともわたしたちは、現在の「日の丸」「君が代」強制をめぐる日本の状況がいかに異常であるかをあらためて胸に刻むべきである。
(編集部)
最終更新:2019.04.26 09:04