釈放後、すぐに勤め先の城西園に電話したところ、城西園からは自宅待機命令を受け、顛末書の提出を命じられた。もちろん、木村さんは事実どおりのことを記載して顛末書を提出した。釈放から1週間ほど経過した年明け、木村さんは城西園の人事担当者に対して顛末書の内容を説明したが、さらに1カ月間の自宅待機を命じられた。
冤罪に巻き込まれたが晴れて釈放されたにもかかわらず、なぜこのような扱いを受けないといけないのか? 木村さんの不安は想像に難くないだろう。
そして、自宅待機期間満了目前の1月末、再び城西園人事担当者に呼び出された木村さんは、諭旨解雇とする旨を告げられた。諭旨解雇とは、懲戒解雇相当であるものの、退職願を提出させるなどして懲戒解雇として扱わない措置などを意味する。つまり、実質的には懲戒解雇相当の事態であると城西園は捉えたのである。
木村さんは、突然の解雇通告に驚きを隠せなかった。城西園側の説明では、本来は懲戒解雇に相当するが温情で諭旨解雇にする、とのことであった。
不起訴処分はその後に発せられたのであった。そもそも冤罪であるにもかかわらず、さらに解雇されたことに到底納得出来なかった木村さんは、私のところへ相談に訪れた。
おわかりのとおり、本件は、誤って逮捕勾留された、つまり冤罪被害者である木村さんに対して、逮捕勾留されたという事実のみをもって城西園が過度に重く受け止め、推定無罪の原則を無視して拙速な解雇を行ったという事案である。
逮捕勾留されたということは犯罪者であることを意味しない。この推定無罪原則に従って判断すれば、本件解雇が違法無効であることは明らかであった。