ジャニーズ並みの人気!?公明党時局講演会での講演した鈴木直道夕張市長(撮影・横田一)
苫小牧での時局講演会にいた創価学会太平洋総県の中村守・総県長に対し、“菅官房長官・佐藤副会長暗躍説”をぶつけてみたが、肯定的な回答が返って来た。
「佐藤副会長ももう、だいぶ気合を入れているのですか」と訊いてみると、「気合を入れています。そうですね。よくご存知なのですね」と答えたので、「素早く公明党推薦が決まったのも佐藤副会長の後押しがあったのだろうと(見ている)。佐藤副会長と菅官房長官の太いパイプがまた働いたのか」とも聞くと、「そうでしょうね。まあ公明党本部の様々な(世論)調査の中で答えが出たのでしょう」と説明してくれた。そして中村氏は、同じ投開票日の北海道知事選と道議選の相乗効果を狙ってものともこう強調した。
「公明党道議の選挙のためにもなるし、鈴木市長推薦をしたほうが風になる!」
官邸と公明党の意向が合致して中央主導で自公推薦候補となったようにみえる鈴木市長については、「週刊新潮」2月21日号が「北海道知事選で自民党大混乱 『菅官房長官』の安手な私情」と題して記事化(ネット媒体「デイリー新潮」が22日に配信)。次のような政治部デスクのコメントを紹介していた。
「2人はともに法政大卒の同窓で、菅さんは高校卒業後、集団就職で上京した過去を持つ。一方の鈴木さんも高卒後、都庁職員として働きながら法政大の夜間学部を卒業した苦労人です。菅さんは、同窓かつ苦学生エピソードを持つ鈴木さんに惚れ込んだんですよ」
そして傍観者を決め込むヤル気喪失気味の自民党道議の不安と落胆ぶりにも触れしながら、「苦学生のお涙頂戴劇にもらい涙をする菅氏に、他の観客の目は冷ややかだ」と結んでいる。
たしかに自民党道連関係者(地元の国会議員や地方議員)の目は冷ややかであるのは間違いないが、熱烈な声援を送る“観客”もいる。公明党時局講演会での“鈴木市長物語”に感動して拍手喝采をした公明党支持者(創価学会員)のことだ。
波乱万丈だったという鈴木市長が30歳で初当選を果たし、鈴木市長は2期8年の間に財政再建などに取組み、菅官房長官と頻繁に会うほどの関係を構築していく中、再び人生の岐路に立つ。夕張市長選三選を目指すのか、北海道知事選に出馬するのかの選択を迫られたのだ。悩んだ上での決断の場面を鈴木市長は次のように紹介した。
「1月27日の夜、私は妻と向き合っていました。この8年間、本当に苦労をかけた。甲斐性がないものですから。妻が一生懸命働いたおかげで、私も存分に夕張のために様々な仕事をさせていただけた。結婚して家を買って全部投げ売って、夕張に付いて来てくれた。感謝しかないです。その妻に対して『もう一度、ゼロになるかも知れない。もう一度、ゼロからのスタートになるかも知れない。でも北海道のために挑戦させて欲しい。付いて来て欲しい』とお話をしました(「頑張れ!」の声)。しばしの沈黙の後に、一言、妻から『分かりました』という言葉をいただきました(拍手)」(11日の講演)
地元で鈴木市長がジャニューズ並の人気を誇る理由が見えてきた。イケメン若手市長のルックスと、小泉進次郎氏並のトーク術に加えて、シンガーソングライターならぬ「役者兼脚本家」の才能も持ち合せていると思ったからだ。実話をショーアップして自ら語る能力は抜群ともいえる。
「ゼロからのスタート」となった8年前の夕張市長選と、自公推薦候補となった今回の北海道知事選とは全く状況が違う。安倍政権ナンバー2の菅官房長官の意向を後ろ盾に道連選考途中での“フライング出馬会見”に踏み切り、“公明党カード”が切られて自公推薦を勝ちとった。菅官房長官と佐藤副会長の落とし子ともいえるが、まさに巨大戦艦のような自公に支えられてスタートとなったのだ。これを二度目の「ゼロからのスタート」であるかのように語るのはいくらなんでも誇大広告気味なのではないか。
2月1日の出馬会見でも妻との会話を紹介した後、鈴木市長は涙を浮かべてフラッシュの嵐となったが、極めて優秀な役者兼脚本家のように見えないだろうか。
苦労話を野望実現のネタにする能力を役者兼脚本家のように見える鈴木市長は、高卒都職員からスタートした20年後、北海道知事ポストに手が届くチャンスを手に入れるところまで登り詰めた。しかし菅官房長官との関係構築の中で権力者に異論を唱えない迎合的処世術も身につけたようにも見える。石川氏と違って、知事選の三大争点(泊原発再稼働・カジノ誘致・JR廃線問題)で安倍政権に異論を唱えていないからだ。
北海道知事選は、人物論を前面に出す国策追随型の鈴木氏と、脱中央依存路線の政策論を語る地方自立派の石川氏の一騎打ちともいえるのだ。
(横田 一)
最終更新:2019.02.27 11:09