そんななか、今年9月11日に行われた神社本庁の役員会では、理事から裁判の和解方針の決議が提案されるなど議論が紛糾。その席で田中総長が「これ以上、皆さんがたからいろんな意味で暗に批判されるようなことは耐えられません」と発言し、ついに辞意を表明したのである。田中総長が引責辞任することで、神社界の混乱は徐々に収束に向かうかに思われた。
ところが、田中総長はその後に辞意を撤回。本サイトでも既報のとおり、10月9日には「今後も総長の職務を全う」する旨などを記した文書を各神社庁に通達して、なんの責任も取らずに総長の座に居座り続けているのである。
「田中総長は例の辞意表明のあと、側近職員らから取り消すよう強く説得されていたようですが、この慰留にも打田(神政連会長)さんの働きかけがあったとささやかれています。こうしたなかにあって、鷹司統理は田中総長の前言撤回を快く思わず、公然と総長辞任を促す発言をなされたのです」(神社本庁関係者)
それが神社界で広く知られることになったのが、「神社新報」(10月22日付)の取材に対して鷹司統理が述べた発言だ。
「私としてはあくまで九月十一日の(田中総長の)発言を真摯に受け止めて尊重したいとふ気持ちで、それは今後も変わらない。一般的には口頭での辞任の意思表示でも法的に有効とされるものであって、責任ある立場の者が朝令暮改のやうに前言を翻すことはあってはならない。とくに神職の世界ではそのやうなことはないものと信じてをり、いづれ然るべき時期に辞表の提出があるものと思ふ」
前出の神社本庁関係者によれば、「統理が総長へ直接的に辞任を促されるのは異例中の異例。近年の本庁と神社界の状況を深く憂慮されていることの表れでしょう」という。また、鷹司統理がここまで踏み込んだのは、神社本庁が総長の任命権を持つ統理の了解を得ずに田中総長続投の通達文書を出したことに対する不満など、田中総長による“強権支配”への不信感もあるのだろう。