たとえば、入管法改正案が衆院で強行採決された翌日の『ひるおび!』(TBS)では、山下貴司法相の不信任決議案で国民民主党の山井和則議員が趣旨弁明を約1時間45分にわたって繰り広げたことを、野党の“引き伸ばし”作戦として紹介。田崎史郎が「いかに自分たちが格好良く反対しているのかっていうのを見せようとしているだけなんですよ」と言い、八代英輝弁護士は法案を「お粗末極まりなさすぎる」と批判しながらも最後は「(野党が)対案を示して国民が選択肢を得ることが必要だった」とまとめた。
また、参院での未明の強行採決のすぐあとに放送された『上田晋也のサタデージャーナル』(TBS)でも、無能大臣・桜田義孝五輪担当相の問題を含めて“資質を問う野党も問われる大臣も「どっちもどっち」で政治不信!?”と取り上げ、出演していた眞鍋かをりは「野党の追及の仕方を追及する人がいない」などとコメントした。
中身がスカスカの法案を強行採決した政権の暴走や、資質が疑われる大臣を任命した安倍首相の責任は不問に付し、なんでもかんでも「野党が悪い」でその場を締める──。これは、権力を濫用する与党に野党が異議を唱えることを「野党が反発」「与野党の攻防」などと表現して矮小化し、数の力に任せた独裁政治を「多数決だから当然」と言って間違った民主主義の解釈を垂れ流してきたのと同じだ。
そして、社会に新自由主義の考え方によって物事を判断する価値観が蔓延するなか、維新が叫ぶ「与党の足を引っ張る野党は税金の無駄だ」という主張を国民が容易く受け入れてしまう土壌は、もうすでにできあがっているのだ。
しかも、つい最近も自民党憲法改正推進本部の会合では、川上和久・国際医療福祉大学教授が、憲法改正について〈(国民)投票に向けて改憲派も反対派を敵と位置付け、名指しで批判するなどネガティブキャンペーンが必要と説いた〉という(時事通信5日付)。来年の通常国会では、安倍政権が反対野党への攻撃に力を入れてくることは間違いないが、ここに思考停止のメディアが丸乗りすれば、国民世論はどうなるか。恐ろしい展開は、すぐ目の前まで近づいていると言わざるを得ないだろう。
(編集部)
最終更新:2018.12.13 11:54