香山氏も市の姿勢について、こう厳しく批判する。
「南丹市の対応には疑問を感じざるをえませんね。そもそも、今回の講演会は子育て支援や虐待防止がテーマで、憲法改正など意見が対立するような話でもない。それをごく一部の人の抗議に結果的には屈して中止にしたわけです。しかも、中身は抗議というより、脅しです。たとえば私のこのテーマに関してのこういう主張が良くないという具体的な指摘ではなく、ただただ『香山リカ』が来るのはけしからん、と街宣車や暴力をちらつかせて、恫喝してきたわけでしょう。そういう暴力的な脅しに屈して、講演会を中止するというのは、言論の自由の自殺行為だと思います」
香山氏は、市の「安全への配慮」という弁明にも疑問を呈し、ならば、被害届を出すべきだという。
「報道を見ると、南丹市の市長さんは『屈したわけではなく、安全に配慮しただけ』とおっしゃっています。でもそうなら、よけいにきちんと被害届を出してもらいたかったと思います。脅されて、事業を変更せざるをえなくなったわけですから、威力業務妨害、あるいは脅迫、刑法上の問題に該当する可能性もあるのではないでしょうか。でも、いくつかの新聞をみると、市側は『被害届は考えてない』と言っているようです。これ以上、事を荒立てたくないのかもしれませんが、安全上の被害を受けたというなら、そこは毅然として、相手がいくら市民であっても、被害届を出してほしいし、できれば警察にも動いてほしい。
私がそう考えるのは、これで被害届も出さなかったら、結局何のお咎めもなしということになり、抗議した側が暴力による脅しがうまくいったという成功体験になるからです。もしかしたら、自分たちの主張が理解されて市が動いた、と曲解して利用されるかもしれません」
実際、夫が市役所に出向いて抗議をおこなったとみられる前述の女性は、FBで講演会中止のニュースに〈「民族運動の成果」と主人は申しております〉と勝利宣言とも取れる書き込みを繰り返している。