この“偶然の重なり”はさておき、昭恵氏は名誉校長を降りたあとも諄子氏と頻繁にメールでやりとりしていたことがあきらかになっているが、電話でも、昭恵氏はこのように思いを伝えていたのだと諄子氏はいう。
「今でも名誉校長でありたいという気持ちは変わらない」
「今、琵琶湖の竹生島に行ってました。そこの滝のところに龍がいて、その龍を見た時、籠池さんだと思ったんです。籠池さんご夫妻は大きな使命がおありなんだと思ったんです」
この獄中記であらためて驚かされるのは、こうした諄子氏と昭恵氏の親密ぶりだ。問題発覚以前には、昭恵氏から「素晴らしい教育をやっている学校がある」といって加計学園の御影インターナショナルこども園への見学を薦められたり、またあるときは「大本教のお孫さんの出口光さんと会わないか」と誘われたり(このとき出口氏が会長を務める「メキキの会」に入会した諄子氏は、同会の会議で下村博文・元文科相にも会い、塚本幼稚園の会報を手渡したという)。
さらに、昭恵氏が小学校視察に訪れた際には「夕方からあべのハルカスで飲み会がある」と言っていたというが、その後、飲み会の最中に昭恵氏から間違い電話があり、〈遠くからかなり酔っぱらっておられる昭恵さんの声〉が聞こえてきたと諄子氏は回顧している。
昭恵氏は泰典氏の証人喚問がおこなわれた昨年3月23日の夜に、100万円の寄付や国有地取引での口利きを否定するコメントをFacebookに投稿。その後はまるで他人事のような言動をとっている。つまり、「祈ります」だの「籠池夫妻には大きな使命がある」だのと言いながら最大の手のひら返しをおこなったのは昭恵氏であるわけだが、一方で諄子氏は獄中の手紙のなかで、こう綴っている。
〈今思うと、昭恵さんがおっしゃったように、主人は天から使命を頂戴したのかもしれない。裸の王様の総理大臣と相対し、時代のけじめをつける、という使命を〉
この獄中記では、ここまで挙げた問題だけではなく、安倍首相のブレーンで最大支持者であるJR東海の葛西敬之名誉会長や、日本会議、そのほかさまざまな人びとや団体との関係についても詳しく書かれている。さらに、拘置所の非人道的な実態や、そんななかでも前向きに日々を過ごそうとする諄子氏の力強い生き方が綴られ、また、塚本幼稚園時代に保護者に対して「ヘイト文書」を出していたことについても、〈あの文面では『差別だ』と捉えられて当然〉〈本当に申し訳なく思っており、ここに謝罪します〉と問題にも向き合っている。
今後、籠池夫妻には裁判が控えているが、そのまえに、森友問題というものがいかに“国家犯罪”であるかを、本書で再度確認してみてほしい。そして、これを読めば、森友問題はまったく終わった話ではないことを痛感するはずだ。
(編集部)
最終更新:2018.10.17 05:28