現在、小川氏は「視聴者の会」の事務局長から降りているが、かえって雑誌や書籍などでの安倍応援活動は勢いを増し、野党・政敵・リベラルメディア叩きの急先鋒となっている。
なかでもいろんな意味で注目を浴びたのが、昨年10月、極右雑誌「月刊Hanada」の飛鳥新社から出した『徹底検証「森友・加計事件」――朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』だろう。「徹底検証」などと銘打っているものの、内容は御察しのとおりで、森友問題や加計問題でスクープを連発していた朝日新聞を標的に〈「冤罪事件」を計画し、実行した「主犯」〉〈「安倍叩き」のみを目的として、疑惑を「創作」した〉と攻撃するものだが、記述の具体的な根拠はほとんどなく、小川氏の妄想的分析が書きなぐられているだけ。
たとえば例の「官邸の最高レベルが言っていること」と記された内部文書を朝日とNHKが連続してスクープしたことについて〈ある人物が朝日新聞とNHKの人間と一堂に会し、相談の結果、NHKが文書Aを夜のニュースで、朝日新聞が翌朝文書群Bを報道することを共謀したとみる他ない〉なる荒唐無稽な陰謀論を展開した。結果、朝日は同書の虚偽を指摘したうえで小川氏と版元に謝罪と訂正、損害賠償を求めたのだが、小川氏は拒否し、名誉毀損等で飛鳥新社とともに提訴されている。
しかし、問題なのは、その陰謀論をフル回転させて安倍政権を擁護する内容だけではない。同書が書店に並びはじめたのは昨年の10月16日ごろで、同月22日の衆院選投開票日の直前。選挙期間中には電車などで同書の中吊り広告が打たれ、選挙運動が禁止されている投開票日も少なくとも毎日新聞と日本経済新聞の朝刊に広告を出稿、「安倍総理は『白さも白し富士の白雪』だ!!」「“スクープ”はこうしてねつ造された」などの文言が躍った。
さらには、やっぱり安倍自民党が同書を大量購入し、所属議員や支部などに書面付きで送っていたことも判明している。これは「フライデー」(講談社)が報じたものだが、実際、本サイトも「月刊Hanada」の花田紀凱編集長に電話で直撃。花田編集長も「5000部に近い数字」を自民党が購入したことを認めた。
『約束の日』とまったく同じやり口だ。ようするに、小川榮太郎という自称文芸評論家は、最初から安倍晋三を支援する運動のなかで右派論壇に出てきて、安倍首相を礼賛し、安倍政権へ批判的なメディアに圧力をかけながら、スキャンダルを打ち消す世論をつくろうとし、ましてや安倍側から著書を購入してもらうという極めてベタベタな関係。安倍応援団のなかでも“御用のなかの御用”であり、安倍首相と“運命共同体”であると言っても過言ではないのである。