また、石破氏は会見のなかで、LGBTへの差別解消のための法案についても、「法律をつくることは必要」「差別をなくすということ、権利の侵害を除去するとともに活躍の場をさらに広げていくために、実効性のある法律であってほしい」と発言をおこなった。
先の通常国会では、野党4党が「LGBT差別解消法案」を提出したが、その一方で自民党の「性的指向・性自認に関する特命委員会」は「差別解消法案」ではなく「理解増進法案」を検討。しかしそれさえも党内の反発によって国会提出にはいたっていない。そんななかでの石破氏の発言は大きな意味をもつだろう。逆に言えば、杉田発言を受けて性的少数者に対する提言を盛り込むこともなく、挙げ句、総選挙のための山口県連との会合では安倍首相と杉田議員が同席していたというほど。「生産性」発言の何が問題か、いまだに安倍首相はまったく理解していないのである。
さらに石破氏の政策で驚かされたのは、日米地位協定の改定に踏み込んだことだろう。
石破氏は憲法改正について「スケジュール観ありきとは考えていない」「国民の深い理解を得ることが重要」としたが、一方、外交・安全保障政策に話題が及ぶと、アメリカ国内の自衛隊常設訓練場の創設を目指すと発言。そのためには日米地位協定の策定が必要だとし、こう述べたのだ。
「(日米は)お互いに対等でなければならない」
「在日米軍とのあいだには日本は家主、米軍はゲストという関係は十分構築可能なもの」
憲法改正より日米地位協定の見直しを──。無論、石破氏の安全保障の考え方は自衛隊の役割を拡大させる危険なものではあるが、在日米軍に特権的な地位を与える現在の不平等な地位協定の改定を打ち出したことは、対米従属で思考停止、沖縄に負担を強いてばかりの安倍首相とはまったく対照的だ。
このほかにも、石破氏は北朝鮮に絡んで「拉致問題、核ミサイル問題は圧力だけですべて解決する問題ではない」と切り込み、東京と平壌に連絡事務所を設けることで「北朝鮮の主張を公的に検証する仕組みをつくる」と提言。「拉致問題の全面的解決がなければ何も進展しないというものからは脱却しなければならない」と、安倍首相の怠慢を見事に暴いたのだ。
石破氏の政策ビジョンは手放しで賛同できるものではないが、それでも、その中身は安倍首相の「不都合な真実」を暴露するものであることは間違いない。しかも、石破氏は昨日の会見でアベノミクスを検証した資料を配付。そこではGDPかさ上げ問題など安倍首相の嘘・まやかしにも踏み込んでいる。
少なくとも石破氏は、どんな記者からの質問にも意味の通じる日本語でていねいに返答しており、ここが安倍首相と大きく違う点であることは一目瞭然。果たして、安倍首相の政策に真っ向勝負を挑む石破氏との公開討論会で、安倍首相はどんな醜態を晒すことになるのか。楽しみなところだ。
(編集部)
最終更新:2018.08.28 11:09