小説、マンガ、ビジネス、週刊誌…本と雑誌のニュース/リテラ

ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100 第24号 

残業代をおさえるために出退勤簿を会社が改ざん! 労働時間を証明するために労働者がしておいたほうがいいこと

 今回登場する会社は、福岡を中心にホテルを営む株式会社である。ここで働いていた労働者のK氏からの相談を受けたのは、何年か前のことである。K氏の相談は、会社から勤務態度等について指導された事実が存在しないにもかかわらず、勤務態度不良を理由に突然給与を6万円も下げ、賞与を支給しないとの文書を渡されたので退職したこと、退職するまで残業代も払われず、ほとんど休みなく長時間働かされてきたのでなんとかしてほしいというものだった。

  K氏が勤めるホテルは、ビュッフェや婚礼等の特別に提供される料理や各種イベントなど、飲食部門を手広くやる一方、充分な調理スタッフを雇っていなかった。配膳スタッフも十分でないため、時には、調理スタッフが配膳も行わざるを得なかったそうである。そのような状況であるため、調理スタッフ全員が本来の担当を超えて助け合いながら、恒常的に長時間労働しているとのことであった。特に、K氏は、ホテルで唯一の和食の料理人であり、ホテルで提供される和食を一人で調理していたため、早いときは午前9時から遅いときは午後11時まで働き、繁忙期には連勤が当たり前とのことであった。

 そのうえ、格安ビュッフェで採算をとるため、料理の使いまわしが横行していたり、まともな休憩が取れないため他の調理スタッフが勝手口の外にそのままの格好で喫煙に行った後、手洗い消毒をきちんとしないまま調理に戻ったりしていることが横行しているとのことであった。そもそも、スタッフ用トイレも壊れたまま修理してもらえないので調理場から離れた一般客用のトイレまで走らないといけなかったり、一般客用トイレの排水も故障しているため階下の宴会場にシミができていたりしたそうで、会社が調理スタッフの衛生管理を責められるような状態ではなかった。

 K氏は、厳格な職場で下積みをした経験から上記のような不適切な状態を我慢ができず、見かけたときは必ず注意をしていたそうである。そのことから、かえって古来のスタッフに嫌われ、一度出入りの業者から家庭用のサランラップを買ったことや食事の時間も取れないのでビュッフェの余り物で空腹をしのいだことを、ホテルの財産を流用し秩序を乱したなどとして減給されたとのことであった。

 一般客用のトイレの排水も故障しており、労働者用のトイレも故障しているとなると、労働安全衛生法23条1項や旅館業に関する規制等への違反も疑われたが、まだ多くの同僚が働いており、自分が相談した結果、営業停止等になるのは忍びないということだった。また、減給については明らかに違法であるものの、予告された日に退職しており、すでに就職先も決まっており心機一転頑張りたいので紛争をできるだけ長引かせたくないということだった。ホテルの衛生状態を放置することにはモヤモヤした感情を抱いたものの、K氏の言い分もわからないでもなく、弁護士には守秘義務があるので、粛々と残業代を回収することにした。

そもそも、K氏は、問題のホテルに転職するにあたり、家庭の事情から長時間勤務を避けたかったそうである。そのため、知人から紹介されて会社に連絡した際も、所定労働時間が8時間で週休2日であることを確認し、面接の際もその旨をしっかり確認したそうである。しかし、ふたを開けてみると、自分以外に和食の料理人がいないため、責任感の強いK氏は責任者が一方的に入れてくる予約に応じて働かざるを得なかったとのことであった。K氏によると、最大500人分の和食を一人で準備させられたこともあるとのことであった。市販だしを使うことなど考えられないK氏は、前述したように早いときは午前9時から遅いときは午後11時まで働き、休日もコース料理の準備のために出勤することもあったそうである。求人の際のみならず、面接のときも、労働基準法に則った労働時間を伝えながら、採用するやいなや、所定労働時間を無視し、一方的に所定労働時間外の仕事を担当させる会社のやり方にかなりの悪質さを感じ取った。

関連記事

編集部おすすめ

話題の記事

人気記事ランキング

話題のキーワード

リテラをフォローする

フォローすると、タイムラインで
リテラの最新記事が確認できます。