その象徴的な例として挙げられたのが、2016年7月に発生した相模原障害者殺傷事件。この事件で19人もの人々を殺害した犯人は「障害者は不幸しかつくれない。いないほうがいい」などといった優生思想に基づく強い差別意識をもっていた。
そして、この事件で明るみになったのは、犯人のような差別的な考えをもつ人は決して少なくないという事実だった。番組レギュラーの大橋グレース氏はこのように語る。
「そのときネットに出ていた『障害者でお金がかかる人は死んでも当然だ』とかっていう言葉と内容が(戦争中と)あまり変わらないと感じましたね」
同じく番組レギュラーの玉木幸則氏も、「戦争」が「経済活動」に置き換わっているだけで、障害者をめぐる視線はさほど変わらないと指摘する。
「戦争のときは、戦争の役に立つか立たないかという指標があって、いまはいまで、経済的な活動の役に立つか立たないかという指標があって、それでいくとね、すごくキツいなと思うんですよね」
大橋グレース氏は多発性硬化症を発症し、呼吸器を付けて生活しているが、やはりそのことに対しても差別的な言葉を投げかけられることがあるという。
「私自身も呼吸器使ってたら『金のムダだ』とか『みんなのお金使って』と言われることあるから、それは戦争の時代と何も変わっていないんじゃないかなって。やっぱり、命っていうのは、価値があるとかないとか分けられないものだっていうのを、本当に認識しないと、間違った優生思想のもとに、この命は大事だけどこの命は大事じゃないとかってなってしまうと怖いなと、それは戦争がある時代もいまもそうなんじゃないかなと思っています」
つい先日、自由民主党の杉田水脈議員が「LGBTは『生産性』がないので支援する必要はない」などとする差別丸出しの主張を「新潮45」(新潮社)2018年8月号に寄稿し、大きな問題となったのは記憶に新しい。
しかも、安倍首相のゴリ推しのもと自民党入りした彼女に処分がくだることはなく、杉田議員からはいまだに説明や謝罪の声はない。
自民党や安倍政権の本質、日本社会の本質は、障害者に「国の役に立たない人間は死ね」と迫った戦争中とほとんど変わってないということだろう。この社会を変えないかぎり、障害者が戦時中に受けた残酷な体験はこれからますます「当たり前のこと」になってしまう。『バリバラ』の戦争特集はそのことを再認識させてくれたといえる。
(編集部)
最終更新:2018.08.10 11:54