参議院HPより
安倍自民党の改憲実現に向けた動きが出てきた。5日に衆院憲法審査会を開き、国民投票法改正案の趣旨説明をおこなうことが決定したのだ。
この国民投票法改正案は、国政選挙と同様、憲法改正のための国民投票をショッピングセンターなどでもできるようにするなど一見当たり障りのない内容だが、この審議を踏み台にして改憲議論に突入させたいという安倍政権の思惑がミエミエ。3月の自民党大会で安倍首相が「いよいよ憲法改正に取り組むときがきた」と大号令をかけたように、年内に憲法改正の発議をおこなうという計画は着実に進行しているのだ。
そんななか、国会でゾッとするような事件が起こった。なんと、「9」とプリントされたTシャツを着た女性の国会傍聴を、参院警務部が制止したというのだ。
先月30日にこの女性は以下のようにツイートしている。
〈先日国会傍聴に行ったら、「9がついている物はダメです」と係員に止められました。ネックレスもタグも9は外せと言われます。結局カーディガンで隠して入るように言われました。「NO WAR」もダメなんだって。9はダメで他の数字はOKなんだって。変だよ。〉
女性はツイートとともに当日のファッションの写真も投稿。それは「No 9」と描かれたTシャツで、数字の下には「NOWAR」「LOVE & PEACE」とプリントされている。また、やはり「9」と印刷された手提げバッグも写っている。
「9」「NO WAR」というTシャツを着ているだけで排除される──。このツイートは6000RTを超える大きな反響を呼んでいたが、さらに昨日、東京新聞がこの問題を報道。記事によれば、参院警務部の職員はこう言って女性を制止したという。
「9を付けているね、そのようなものを付けて入ることはできません」
「NO WARとも書いているだろう」
「意志表示をしているものは駄目です」
しかも、女性が「1だったらいいですか」と質問すると、この職員は「1だったら大丈夫」と述べたのだという。さらに、東京新聞が参院警務部を取材したところ、サッカー日本代表・岡崎慎司選手の背番号「9」が入ったレプリカユニフォームの場合は「制止しない」、九条ネギや「銀河鉄道999」のTシャツの場合も「政治的メッセージは含まれておらず、入場は拒まない」と回答しているのだ。
つまり、憲法9条と結びつく「9」の数字や「NO WAR」は「政治的メッセージ」の意志表示と捉えられ、国会の傍聴さえ許されないというのである。
9がふたつ並ぶ憲法99条では天皇と公務員の憲法遵守義務が規定されているが、その遵守義務を課せられた国家公務員が憲法を「危険思想」として取り締まることの倒錯ぶりもナンセンスだが、いちばんの問題は「憲法9条」のタブー化が深刻度を増していることだろう。
じつは、今回のようなケースはこれがはじめてではない。安保法制が成立した直後の2015年10月にも、東京新聞は「『No.9(憲法九条)』と書かれた小さなタグや缶バッジをつけた市民が国会本館や議員会館に入ろうとすると、警備員らに制止される例が相次ぐ」ことを報じている。