いやいや、「焼肉をゴチになったから、そのお返しに」というかたちで特区が決まったなんて誰も言っていないし、思うわけがない。むしろ、「加計さんは長年の友人だ」と強調し、あたかも学生同士のカジュアルな付き合いのなかでおごってもらったかのように「印象操作」しているのは、安倍首相のほうではないか。
そして、安倍首相と加計理事長の仲は、そんな「焼肉をおごる・おごられる」というような庶民的なものではけっしてない。「腹心の友」という言葉がもつ清いイメージとは裏腹な、「ズブズブの関係」と表現すべき間柄だ。
そもそも、安倍首相より3歳年上の加計理事長が出会ったのは、留学先である南カリフォルニア大学のキャンパスだったことは周知の通りだが、当時はそれほど仲が良かったわけではないという。
加計問題を追いかけるジャーナリスト・森功氏の『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(文藝春秋)によれば、ふたりが接近したのは帰国後、安倍が神戸製鋼に就職して以降。昭恵夫人がFacebookに投稿した、2015年のクリスマスイブに撮られた“男たちの悪だくみ”写真にも写っている三井住友銀行・元副頭取で現在、金融庁参与である高橋精一郎氏と週末に大阪で遊ぶようになった際、そこに加計氏も加わるようになってからだという。当時、すでに学園の副理事長という立場にあった加計氏は、羽振りも良かったらしい。
〈いきおい彼らの遊びは、もっぱら時間と資金力のある加計任せだ。加計が安倍に声をかけ、それに応じるかっこうで、盟友関係がのちのちまで続く〉(『悪だくみ』より引用)
実際、その後のふたりの関係を赤裸々に物語るかのような報道がなされたこともある。「週刊新潮」(新潮社)や「週刊文春」(文藝春秋)では、加計理事長が口にしていたという、こんな発言が紹介されている。
「彼とゴルフに行くのは楽しいけど、おカネがかかるんだよな。年間いくら使って面倒を見ていると思う?」(「週刊新潮」2017年3月16日号)
「(安倍氏に)年間一億くらい出しているんだよ。あっち遊びに行こう、飯を食べに行こうってさ」(「週刊文春」2017年4月27日号)
さらに、「安倍に近い関係者」もまた、かつて安倍がこのように話していたと証言しているのだ。
「加計さんは俺のビッグスポンサーなんだよ。学校経営者では一番の資産家だ」
これらの発言が事実ならば、安倍首相が強調する“長年の友人関係なのだからおごられることもある”という関係とはまったく違い、加計理事長は意識的に「年間一億」もかけて安倍首相の「面倒を見て」おり、一方の安倍首相も加計理事長のことを「スポンサー」として認識していることになるだろう。「焼肉をおごられた」なんて次元の話ではまったくないのだ。