こうした過剰警備の背景にはもちろん、官邸の意向がある。安保法制時の国会前デモで車道に人が溢れた模様をマスコミが報道した際、官邸が激怒し、以降、警察は車道を完全封鎖するようになった。その後も、大規模なデモが起きるたびに、官邸から警察庁・警視庁への圧力が加えられ、警備はどんどん過剰になっていったのだ。
森友文書改ざん問題が起きたあとも、警察官僚出身の杉田和博官房副長官あたりが改めて警備の強化を古巣に命じた可能性は極めて高い。安倍首相はこのところデモの拡大に過敏になっていたと言われており、それを忖度したのかもしれない。
安倍首相が昨年の東京都議会選で、批判の声をあげた人びとに指を指しながら「こんな人たち」と言い放ったことは記憶に新しいが、安倍官邸は表現の自由に基づくデモという民主主義の根幹の権利まで潰しにかかっているのだ。
しかも、東京都議会は市民のデモや抗議活動、ジャーナリストによる取材を取り締まることが可能になる迷惑防止条例改正案を可決・成立させた。施行は7月1日だが、警視庁はすでに勢いづいており、施行前からかなり強引な取り締まりを仕掛けてくる可能性もある。
森友文書改ざん問題に、南スーダンPKOにつづくイラクPKOの日報隠蔽、働き方改革をめぐるデータ捏造に野村不動産の過労死自殺隠し、前川喜平・前文科次官の授業を実施した公立中学校への介入と圧力──。いま、この国の民主主義は安倍政権の強権政治によってズタボロにされ、瀕死の状態に追い込まれている。そのうえ、デモの権利まで奪われてしまったら、この国はそれこそ独裁国家と変わらなくなってしまう。
だが、それでもきょうも官邸前には多くの人びとが詰めかけ、真相解明を求めている。今月14日(土)には、これまでで最大規模の抗議デモが国会前で予定されている。この国の民主主義を守るためには、圧力に抗して、もっともっと怒りの声をあげる動きを広げていくしかない。
(水井多賀子)
最終更新:2018.04.06 08:18