すでにメディアでも数多く指摘されているように、首相が出席する国会での答弁は首相秘書官が省庁との調整にあたる。そして、森友問題の対応にあたっていたのは今井首相秘書官だとみられている。つまり、安倍首相の「総理も国会議員も辞める」発言を受けて、今井首相秘書官が決裁文書などの公文書に土地取引が〈特例〉であったことや昭恵夫人の名前が出てくることを把握した際、この不都合な文書の改ざんを佐川氏に命じたのではないか──。
事実、「週刊文春」(文藝春秋)18年3月29日号では、じつは佐川氏が今井首相秘書官と親しい関係にあったことを伝えている。
同誌のなかで、財務省関係者は「上昇志向の強い佐川氏が、“上”の意向なしに、そんなリスクをとるとは思えない」と証言したあと、このように言葉をつづけているのだ。
「佐川氏と経産省の関係の深さは、知る人ぞ知る話なのですが……」
「(今井氏と佐川氏とは)省庁間を超えて親しい」
これは匿名の財務省関係者だけの証言ではない。同誌の記事では〈佐川氏をよく知る〉という牧野力・元通商産業事務次官も「今井とは仲は良いはず」と同様の証言をおこなっているのだ。
じつは佐川氏と今井首相秘書官は同じ1982年入省の同期で、その上、佐川氏は〈予算策定を通じ関わった他省庁は経産省のみという異色のキャリア〉(「週刊文春」より)。経産省の成長戦略に理解があった佐川氏は、主計局時代には経産省から感謝されることもあったといい、そうした点から今井氏とも関係を深めていったのかもしれない。
ともかく、気心が知れた仲である佐川氏に今井首相秘書官が改ざんを命じたのではないかという疑いは、この情報によってさらに濃厚になったと言えよう。
しかも、総理答弁づくりにも詳しい前川喜平・前文科事務次官も、現在発売中の「週刊朝日」(朝日新聞出版)18年3月30日号の記事のなかで、「官僚が、これほど危険な行為を、官邸に何の相談も報告もなしに独断で行うはずがない」と指摘した上で、「忖度ではなく、官邸にいる誰かから「やれ」と言われたのだろう」と推測。その「誰か」について、前川氏は「私は、その“誰か”が総理秘書官の今井尚哉氏ではないかとにらんでいる」と実名を挙げているのだ。
いや、じつのところ今井首相秘書官は、文書改ざんよりもっと前、つまり問題の核心である土地取引の段階からかかわっている可能性さえある。前川氏も、こう述べている。
「国有地の売買をめぐるような案件で、経済産業省出身の一職員である谷査恵子氏の独断で、財務省を動かすことは、まず不可能。谷氏の上司にあたる今井氏が、財務省に何らかの影響を与えたのでは」(「週刊朝日」より)