室井 それが出来ていないから、安倍さんみたいな人が出来上がるんですよね。自分以外の他の人のことを想像できない。貧しい人たちや他国の人のことを想像できない。あっ、でも鳩山さんも二世議員じゃないですか!
鳩山 わたしは四世で、向こうは三世だから。一世勝っている(笑)。なんて、それは冗談ですが、私も祖父の鳩山一郎を尊敬していますが、祖父はかなりリベラルな男だったと思います。それに友愛という考え方を説いていました。そんな環境で育ったし、それ以上に私は政治家になりたくなかった。一番やりたくない職業だった。だから安倍さんのように「おじいちゃんより偉くなろう」なんて発想は、今でもどこにもないですね。
室井 鳩山さんのおじいちゃんはロシア外交を一生懸命やったんでしたっけ?
鳩山 脳溢血で左半身不随の身を押して訪ソし、1956年に日ソ国交回復をやり遂げました。もし元気だったら中国との関係改善にも取り組んだと思います。「共産主義は大嫌いだ」と言っていましたが、「大嫌いな俺だから、友好を掲げても大丈夫だろう」と。「好きな人間は危ないけど、警戒の中でやれば大丈夫」と。ただ旧ソ連との国交が回復できたのは良かったと思うけど、逆に言えば、北方領土問題でアメリカから恫喝を受けたわけです。当時、2島返還が主流だったときに、突如「4島じゃなきゃダメだ」とある種の恫喝があったんです。
室井 またアメリカか。アメリカのためなら北朝鮮と戦争して、日本人がたくさん死んでもいいんですか? 本当におかしい。
鳩山 元防衛官僚で元内閣官房副長官補の柳澤協二さんと話したときに思いましたが、外務官僚も防衛官僚も、日本はアメリカと協力していれば安心だと思い込んでいると。その先のことまで考えていない。だから今、室井さんがおっしゃったように、もし北朝鮮をやっつけるためにミサイルを飛ばして相当打撃を与えたとしても、すべてを無にはできないから、日本にノドンが飛んでくる可能性は高い。でも、官僚も政治家も、アメリカ追随で思考停止してしまっているんです。
室井 安倍さんって、海外好きですよね。ちやほやされたくて、海外にお金をバラまいているみたいに感じるけど、それも問題だけど、それ以上に問題なのは安倍さんにとって、わたしたちの命も海外で配るお金と一緒くらいの価値なんじゃないの。そう思うとすごく恐ろしくなります。
鳩山 安保も、集団的自衛権で自衛隊を海外にアメリカの協力で派遣することが出来るようになりましたが、あれもまさにアメリカの戦争のために日本の自衛隊員の命を差し出すということです。本来憲法では、国際紛争のために自衛隊を含めて、戦力は絶対に持たない、絶対に戦力は外には出さない、と約束しているはずなのに、行くようにしてしまったのは、アメリカのためでしょう。
室井 安倍さんの考え方だと、武器輸出と同じで、自衛隊の命も鉄砲のひとつくらいの感覚に思える。でもそれを応援する人がたくさんいる。
鳩山 私は「大日本主義」だと思っているんですけど、かつてのように、植民地支配はあり得ないとしても、「日本は偉い国なんだ。他の国とは違う強い国でいなきゃいけない」「強い国とは軍事的にも強い国じゃないといけない」という思いが安倍さんだけでなく、一定数の国民にもあるのでしょう。